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「ローカルをかきまぜるワーク&ライフ」アフターコロナのまちと賑わいを考える対談シリーズvol.04

こんにちは、エリマネこ編集部の五月女です。
アフターコロナ時代の「まちづくり4.0」を、先進的な取り組みから探っていく「アフターコロナのまちと賑わいを考える対談シリーズ」第4弾は、教育の観点からまちを巻き込んでいく新閃力の尾崎えり子さんと対談を行いました。

コロナ禍によって働き方が変化し、郊外の居住地でのテレワーク環境に関心が集まっていますが、尾崎さんはコロナ前の2016年から、千葉県流山市でまちと教育と働き方を繋げてきたシェアオフィスTrist(トリスト)を立ち上げていました。また、最近では奈良県生駒市の教育担当プロ人材にも採用されたという顔を持っています。常に新しいスタイルを開拓する尾崎さんの活動と展望から、地域とコミュニティについて語ります。

尾崎さんを迎えた対談は、これまで賑わいをベースにまちにビジネスを展開してきたクオル代表の栗原知己、進行は生駒市住民でもある、エリマネこ編集部・田村康一郎で行いました。

郊外のまちにシェアオフィスをつくったワケとは

まずは、現在尾崎さんの経営する新閃力では3つの事業(①新規事業コンサルティング、②シェアオフィス事業、③教育事業)を手掛けていますが、事業の軸となる部分はどんなところにあるのでしょうか?

尾崎さん「まちの中で、子どもたちが親の文化資産によらずに人脈と経験を積める環境をつくりたい。どの事業にもそれが根底にある。
子供たちがまちの中で様々な職種や価値観を持った大人で普通に出会う機会をつくりたい。みんなが東京に働きに行ったら、知り得るキャリアがすごく少なくなってしまう。仕事だけでなく、最先端のテクノロジーや考え方に無意識的に触れられる環境にない限り、わざわざそこに行かないと触れられないものは、親の文化資本によってしまうので、まちの中にいかに自然に配置するかがとても重要だと思う。」

そんな考えで、尾崎さんは4年前に流山のある通学路のそばに、シェアオフィスTristをつくりました。ただ大人が働く場所を提供しているのではなく、様々な職種で働く大人たちと子どもたちの間で会話したり、レクチャーをする機会をつくったりするなど、ハードよりもソフトを重視して設計したそうです。たとえシェアオフィスの建物や場所がなくなったとしても、入居者同士の交流やコミュニティが成立するほどに関係性が強まっているそうです。

Tristでお笑い芸人さんとコラボした地域向けお笑いライブ

賑わいとは言語化できない言葉

今では尾崎さんは現地のシェアオフィスにいることはほとんどなく、入居者の方々によって運営されています。スポットで清掃業務を依頼しているものの、常駐スタッフを雇用していないので、運営をしている感覚はないといいます。尾崎さんはこの一連の流れを「コミュニティで運営している」と説明しますが、このコミュニティとシェアオフィスの良さや特徴は言葉だけで表現できるものではありません。その姿を見るために、4年間で100自治体くらいが視察にきているそうです。

尾崎さん「(賑わいは)空気を感じてもらわないと伝わらない。プレゼンでどんなに伝えようとしても、ロジックでは一応説明できるが、本質的な賑わいを理解してもらうには難しい。最後のスライドだけ見てこれやればいいのね、というのも違う。」

賑わいを言語化しにくい部分は、長年まちづくり業界で働く栗原にも経験があり、共感を語ります。

栗原「クオルでもまちづくりや賑わいをフィールドに仕事をしているが、賑わいやまちづくりは人それぞれの解釈が文脈によって異なる。賑わいにはポジティブな意図があり、商売であれば、商売繁盛で、交流の場合は促進されるので、賑わいはいい効果が現れている状態、作用であると思う。」

左上から時計回りにクオル栗原、新閃力尾崎さん、MC田村

働く場所の多様性は、教育の多様性にもつながる

コロナウイルス感染症の拡大に伴い、日々の暮らしや仕事は大きな影響を受けました。特に今回注目されたのは“働き方”です。物理的に通勤ができなくなったことにより、テレワークの導入が進み、そのスタイルが浸透してきています。在宅勤務が増えることにより、教育にとっていいことはあるのか、栗原が切り出します。

栗原「今回のコロナ禍で起きた状況について、働いている親の背中を近くから見る機会が増え、間近で仕事の価値を感じられるようになり、よい体験が得られたと思う。Tristについては、今回に限らず、普段から大人の働く背中を見られるので、単純に大人が働く場所だけではないところが腑に落ちた。」

尾崎さんは在宅勤務が増えるなかで、シェアオフィスTristがいかに教育の多様化を促進しているのか、ポイントを次のように語ります。

尾崎さん「家の中だと、親のスタイルしか見えない。Tristでは多様な人を見ることができるので、親以外の働き方、スタンスを理解することができる。親が子どもの興味関心をすべて満たせるわけではないので、身近な親がどう働いているかも大事だけど、それ以外に意識を広げたいと思ったのも、Tristをつくった理由の一つでもある。」

また、尾崎さんがこれまでの経験の中、どんなに学校で未来について熱く語っても、子どもたちの帰宅後、親から受ける教育が変わらないのであれば、子どもたちを変えることができないと感じていました。なので、遠回りに見えますが、子どもの未来を育てるためには親の働き方を変えることが大事で、そのためにまちなかにシェアオフィスをつくり、大人たちに雇用機会や働く場所を提供しているそうです。

「まちづくりはしたくない」 自分の欲と社会の課題をマッチングする

尾崎さんは教育をベースに様々な活動を行っていますが、なぜそこまで意欲的に活動を続けられるのでしょうか。その秘訣は、自分のエゴ、やりたいことに忠実に動くことだそうです。

尾崎さん「まちづくり・地域活性化をしたいとも思っていない。私は世界に影響力を与える100人に選ばれるのが夢で、そのためには日本ごとを変える必要がある。教育がすべての元になるので、教育を変えたい。自分の欲と社会の課題をマッチングさせて、エネルギーを倍増させている。」

話を進める中で、尾崎さん自身のやりたいテーマの実現が、結果としてまちをよくすることにつながっていく様子が伝わってきます。「まちづくりをしていない」という感覚はそういうことなのでしょう。

明確にイメージされている10年後の目標(出所: https://note.com/backcasting/n/ne75092a18ad5

コロナによって価値観が逆転!重要となる価値とは

流山では、コロナ前と比べて変化はあったのでしょうか。
社会がコロナ禍によってテレワーク導入が騒がれるその前から、流山には必要な環境が生まれていて、コロナによる影響は少ないといいます。さすがにステイホームが呼びかけられていた時期には人が来なかったものの、むしろコロナ禍を受けて利用者は増えたようです。
2018年に流山に2拠点目ができるようになったのも、場所性やハードが強みの大手企業に対して、ソフトに価値を置いてビジネスをしてきたことが大きかったそうです。栗原は自身の経験から、不動産業の価値観とTristの価値について対比します。

栗原「不動産は場所の価値を最大化するのが仕事で、駅に近い場所や密になるのが価値だったが、コロナ以降は価値観が逆になった。価値観の逆転により、これからの不動産業界は新しい価値観に基づいて、どうビジネスをやっていくかが大切。そういった意味では、Tristのように場所に付加価値をつけるのではなく、ソフトで価値を売っていかなければならない。」

やりたいことが軸になる、Tristで生まれるコミュニティ

栗原はこれまで、中高生の子どもたちに対してコミュニティの活動が届いていないことを課題と感じてきましたが、彼/彼女たちにとって、コミュニティは邪魔なものなのか?よい施策はあるのかとの栗原からの質問に対し、尾崎さんはこう答えます。

尾崎さん「(中高生に)やりたいことをやらせるのが一番。大人が用意しすぎたり、中高生の感覚を分かろうなんておこがましい。やりたいことに対して、足りないものをどう足していくか、大人が一緒になって考えていくことが大切。」

それでは、個々のやりたいことを一緒になってやっていくというときに、工夫や意識していることはあるのでしょうか。

尾崎さん「Tristはみんなにとって使いやすい場所ではない。入り口は誰でも入れますが、自ら覚悟をもってやりたいことがなければ面白くない場所なので、すぐに(やりたいことがない人は)出ていく。いたれり尽くせりをしても、それを求める人しか来ない。」

それを聞いた栗原は、尾崎さんの率直な姿勢とTristに来る方との共通点を発見します。

栗原「尾崎さんがひたすらやりたいことをやっているから、いい見本が目の前にいると、追従して人がやってくる。みんな、自分が実現したいことがある人がTristにやってくるのだろう。」

地域との関りしろが育むまちへの帰属意識

地域への帰属意識や地元に対する愛着心といった面で、住んでいる人たちは流山に対してどう思っているのか聞いてみました。
そもそも尾崎さんが流山を選んだきっかけには、個人の貢献度合いが高く、関われる範囲が広い、“ベンチャー企業のようなまち”という印象があったそうです。流山にはまだまだ何かできそうな余白があり、行政に頼るのではなく、仲間を集めれば何でもできそうだ!と考える人が、尾崎さんの周りにも多かったのも理由のひとつとして挙げられました。

尾崎さん「自分たちがつくったまちが成長することで、より帰属意識が高くなる。様々なまちがあるので、まちを選ぶ場合において、自分がどこに価値観があるのかを知って選べばいい。」

尾崎さんは今年の春(2020年4月)に、奈良県生駒市の教育改革担当に就任しましたが、500キロ離れた生駒を選んだのはなぜなのでしょうか。
尾崎さんがやりたかった教育改革に着手できることは大きな理由ですが、流山に類似する地域性を感じられたことも影響したといいます。

尾崎さん「(生駒と流山の類似点は)自立しているお母さんが多かったり、地域との関わりがいい感じにありつつ、働きにいく場所も遠くない。地理や価値観的に似ているものがあり、今まで経験が活かせるかなと思った。」

シェアオフィスは子どもたちと地域を繋ぐ手段

今後の生駒での教育改革では、学校の空き教室をシェアオフィスにし、モデルケースをつくることを目標にしているそうです。
尾崎さんは熱い想いを伝える際、よく相手からは、シェアオフィスづくりそのものをやりたいと思われてしまうようですが、尾崎さんの目的では、シェアオフィスをつくることではありません。

尾崎さん「(採用の際に語った)公教育機関の中にシェアオフィスをつくるのは、シェアオフィス事業がやりたいのではなく、子供の教育と親の教育と働き方改革と地域の課題、全部一気に解決できると思っているから。
学校の空き教室にシェアオフィスをつくったら、子どもたちと地域の関係がつくりやすくなって、親にも先生にも相談できないような将来の悩みだったり異性との悩みだったり、それを言い合える仲間ができることはセーフティネットになる。地域に入りづらくなる年齢になる前に実現したい。
もちろん、一足飛びに実現できることではないので、生駒市の方々とひざを突き合わせて、本当にこの解決方法がまちに合っているのかも相談しながら地道に一歩一歩進んでいくつもりだ。」

学校や教育を通じて生み出す地域の特色

生駒でモデルケースができれば、それを全国展開にすることで、地域の特色を出した学校づくりが広がっていきます。そしてゆくゆくは、学びたいことに応じて、その内容で特色を出している地域を選べるような未来を実現したいと野望を語ります。
本対談で語り切れない尾崎さんのビジョンは、下記のnoteにまとめられているので、ぜひご覧ください。

学校の空き教室にシェアオフィスを作って働き方改革も地域とt課題も日本の教育課題も一気に解決させる

学校の空き教室に入るシェアオフィスのイメージ(出所:上記リンク)

対談を終えて

旗振り役や茨の道を歩くのは得意だという尾崎さん。2030年には世界に影響力を与える100人に選ばれたいと宣言しているように、教育からまちを巻き込んでいこうとする様は圧巻で、強いパワーを感じます。
自らのやりたいことを全力で育ててみる人が増えることで、結果としてよいまちになっていく。一方で、そういう人を支える立場の存在や、まちとしてやる気のある人が関われる余白を持つことなどの大切さも、対談の中で気づかされました。
また、大人が働く場所と子供の教育の場所が別々だったというスタイルに変化が訪れている今、両者をつなげて考えてきた尾崎さんの発想からは、これからの地域の姿のヒントも得られそうです。
尾崎さんの今後の活躍からも目が離せません。


アフターコロナのまちと賑わいを考える対談シリーズ
Vol.01 「リアルの賑わいはオンラインに移行するのか?」
Vol.02 「オープンソースまちづくりの可能性」
Vol.03 「未来の都市で人々の行動はどう変わるのか」

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