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Marunouchi Street Park 2023 Summer ― ここに注目!進化を続ける丸の内仲通りの社会実験

先進的なエリアマネジメント活動で知られる大丸有(大手町・丸の内・有楽町)エリア。その活動のひとつである「Marunouchi Street Park」をご存じのエリマネこ読者も多いのではないでしょうか。
すでにエリアのファンにとっては名物のようになっているこの企画。今夏の実施で5年目、夏冬あわせて計8回目となるようです。「都心の広場・公園的空間の在り方を検証する社会実験」として、毎回丸の内仲通りにとても印象的な場が生まれています。
この夏7月27日~9月21日の57日間にわたって開催されているMarunouchi Street Park 2023 Summer(以下、MSP)でも、魅力的なストリート空間の中で、エリアのさらなる改善を見据えたさまざまな実験がなされていました。

今回のMSPの見どころとこだわりを、大丸有エリアマネジメント協会の眞田修平さんにうかがいました。
3つのブロックごとにテーマが設定された丸の内仲通りの様子とともにレポートします!

眞田修平
三菱地所株式会社エリアマネジメント企画部 および 特定非営利活動法人 大丸有エリアマネジメント協会(リガーレ)

持続可能なサービスとメンテナンスを探る「Stay」ブロック

丸の内仲通りを北側の丸ビル・郵船ビル・三菱商事ビル前から歩き始めると、まず設けられているのが、くつろいで過ごせる「Stay」ブロック。
緑あふれる風景にマッチした、かわいいデザインのカウンターのようなものが設置してあります。

これは、屋根部分に風力/太陽光発電をそなえた屋外型給電スポット。ワイヤレス給電ポートにスマホを置くと、充電が開始されました!
この「オフグリッド什器」は、今回の社会実験の検証強化ポイントのひとつとなっています。これまでのMSPではWi-Fiを飛ばすなど、さまざまなサービス提供も試されてきましたが、その設置や運営は必ずしも簡単ではありません。どの程度のサービスをどのように提供するのがよいのか、新しい形が実験によって模索されています。

Stayブロックには、木の質感や背もたれの曲線が美しいベンチも設置されています。
丸の内仲通りには日ごろから動かしやすいテーブルやイスが置かれているのですが、それに比べるとどっしりとした印象です。これは、常設化に向けた耐久性の高い什器として、今回検証されているものです。実際、8月に台風が来た際にも、このベンチは一時撤去をせずに外に出したままで大丈夫だったようです。
くつろげる場所を設けるには、できるだけメンテナンスフリーにすることも重要な視点のようです。

沿道にはひときわ目を引く真紅の「丸の内ラグビー神社」が。これはラグビーワールドカップにあわせたコラボレーション企画となっています。
ちなみに、区道部分で行われている什器の設置などがMSPとしての企画ですが、こちらの神社は民地内で行われている丸ビルの企画とのこと。
丸ビルの敷地内には他にもデザイン性の高い植栽ベンチが置かれており、公共の道路と民間の敷地が一体となった、非常に質の高い都市空間が生まれていました。

店舗やまちのファンとのコラボレーションを感じる「Enjoy」ブロック

次のブロックに入って目を引くのが、道路に張り出して設けられたテラス席。
この座席は、沿道のレストラン専用の屋外客席となっています。

エリアマネジメント組織として道路の占用を行い、店舗が営業をするというスキームでこの客席が成り立っています。

ほかにも、このブロックで特徴的なのがカラフルなストリートピアノ。
演奏されていないときでも楽しげな雰囲気をかもし出していて、フォトスポットにもなっています。

毎年のMSPでも人気でファンも多いようですが、ストリートピアノの運営にはいろいろと気を配りながら、常に検証と改善を行っているようです。クレームが起こりにくい場所での設置、防音クッションの取り付け、演奏可能時間の設定など、工夫は多岐にわたります。
今回は、ピアノ演奏に合わせた声出しやセッションは控えてもらう代わりに、一般公募で演奏者を募る形を試しており、55組からの応募があったそうです(うち21組を選出)。

常にスタッフが目配りをできない中で、いかに気持ちのよい「音楽のある都市公園・まち」を実現するかが模索されています。

MSPといえば!シンボルの芝生をたのしむ「Try」ブロック

いちばん南のブロックには青々とした芝が敷き詰められている一角があり、まさに公園のような気持ちのよい雰囲気の場所となっています。
道路に芝生を敷き詰めるのは、MSP開始当初から行ってきたシンボル的な要素で、多くの人が訪れるブロックとなっているそうです。

敷かれている芝生を見てみると、色のグラデーションや、歩いてみての踏み心地の違いがあります。
これまでMSPでは踏み心地や触り心地がよい天然芝を使ってきましたが、すり減ったり日照によって枯れてしまったりした部分の張替えが必要でした。そこで今回は、メンテナンスが容易な枯れない人工芝の設置も同時に試されています。 

▲上が人工芝で下が天然芝


人工芝だと色や長さが均一で、かかとが高い靴でも沈み込みにくいといった点は利点のようです。
一方、摩耗した人工芝がマイクロプラスチックの海洋流出につながらないかなど、設置を通して総合的な検証がなされるそうです。

芝生とともに、ラグビー日本代表をフィーチャーしたブランコ「ONE TEAM SWING!」も設置されており、子どもだけでなく大人も楽しめる場所となっていました。
ちなみに、通行上の安全のためブランコは固定されていますが、ほどよい揺れに身を預けられるブランコに道行く人たちも足を止め、自然と笑顔が生まれていました。

芝生の上では、シートを広げてピクニックのようにくつろぐ人の姿も。こういった使い方ができるように、芝生の脇にはピクニックシートが置いてありました。
赤いチェックのもののほかに、エリマネ団体の名前が書かれたカラフルなデザインのものも。これは、通りに掲出されたバナーフラッグを再生(アップサイクル)する「Ligaretta」の取り組みの一部とのこと。普段手にすることのないバナー素材ですが、地面に敷いても使えるしっかりした素材で、あざやかな色がMSPならではのピクニックシーンを彩ってくれそうです。

常にアップデートするMSPと丸の内仲通り

3ブロックにわたるMSPを歩いてみて、それぞれの場所に立ち寄りたくなる個性的なしかけが散りばめられていました。
そのひとつとして、丸の内仲通りとエリアのよりよい運営を探るための意図が込められていることがとても印象的です。実験を繰り返し行うことで、新たなチャレンジと検証・改善を積み上げる―エリアの魅力を高めていくための不断のアプローチを見ることができました。




▲Marunouchi Street Park 2023 Summerにおける検証強化項目(プレスリリースより)

過去のMSPを訪れた方にとっては、もしかすると今回はやや空間的にシンプルに見えたかもしれません。実はそこも重要なポイントで、今回のMSPではメンテナンスの手軽さなど、いかに質が高い場所を持続的につくっていけるかも考えているそうです。
すっかり丸の内の風物詩として親しまれるようになってきたMSP、毎回のユニークな工夫に注目しながら、その進化を追ってみるのもひとつの楽しみではないでしょうか。

また、MSPとしての空間づくりだけでなく、開催中に隣接するビルなどでさまざまな連動企画も行われていました。エリアマネジメントとしても広がりも感じることができます。

暑さが厳しいこの夏ですが、MSPの木陰は信じられないほど気候がおだやかで、まさにオアシスのよう。
9月21日(木)まで開催されているので、近くに立ち寄った際にはぜひ今夏のMSPを体験してみてください!

Marunouchi Street Park 2023 Summer 実施概要
実施日時: 2023年7月27日(木)~9月21日(木)11時~22時(最終日は20時まで)
実施場所: 丸の内仲通り(特別区道千第 114 号)
主 催: Marunouchi Street Park 2023 実行委員会(構成団体:特定非営利活動法人 大丸有エリアマネジメント協会(リガーレ)/一般社団法人 大手町・丸の内・有楽町地区まちづくり協議会/三菱地所株式会社)
後 援: 千代田区、東京都
総合企画パートナー・運営: 株式会社乃村工藝社
企画協力: 三菱地所プロパティマネジメント株式会社、三菱地所設計株式会社

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