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「あなたと、エリマネ」《第2弾》―あなたが、エリマネに踏み出した“きっかけ”とは(エリマネスクール第7期受講生インタビュー)

各地で急速に導入が進むまちづくり手法、「エリアマネジメント」。その業務の実際とはどのようなものなのか。そして、業務に携わる当事者は何を考え、どのような思いでエリマネ業務に取り組んでいるのか。そんなエリマネと関わる「あなた」にフォーカスし、インタビューを通じて生の声をお届けします。 

第二弾は株式会社アール・アイ・エー(以下、RIA)で入社時から再開発事業を中心にご活躍されている山下香澄さんにインタビュー。世間的にも注目されているエリマネについて、同社がどのように捉えているのか、再開発がもたらす地域活性化とは ― 等、幅広い視点からお話しいただきました。一般化しつつあるエリマネを学んだきっかけは、周囲に「遅れをとらないようにしたい」との思いもあったようです。(以下、敬称略) 

再開発による地域活性化がエリマネにつながる 

―山下さんの原点は、「地元地域の活性化」にあったそうですね。 

(山下)私が大学生の頃は、建築や都市計画、ランドスケープデザインを勉強している学生の間で、シャッター商店街の話や地域に寄り添って将来を考えていくことの重要性が注目されていた時でした。山崎亮さんの『コミュニティデザイン―人がつながるしくみをつくる』(学芸出版社)などを読んで、「そんな仕事をしてみたい」と思う人が多かったと思います。
私自身、地方出身者ということもあり、「地元を盛り上げていく課題に取組みたい」という気持ちが強かったです。建築学科に在籍していたことも理由のひとつですが、その賑わいのきっかけとなる「場」、「空間」を創ることができる設計事務所を選びました。 

▲センテラス天文館(鹿児島県鹿児島市/千日町1・4番街区市街地再開発事業) 
▲あちてらす倉敷(岡山県倉敷市/阿知3丁目東地区第一種市街地再開発事業)

RIAを選んだ動機は、建物や公共空間などにぎわいづくりのために必要な「場」となる建物や公共空間を作るにあたって、先輩から「再開発事業」という手法があると教えてもらったことがきっかけです。特に都心から地方まで、その場所に寄り添った、求められている事業を進めていると感じました。まちづくりの手法はたくさんありますが、まずは一つの方法を学び、実行してみて、その地域がどのように変わっていくのかを見てみたいと思い入社しました。 

―地元への愛着が今のお仕事に結びついたこと、素敵ですね!現在の業務内容についてお聞かせください。 

(山下)入社時から再開発に関わっていますが、課題や環境は地区ごとに全く異なるため、まだまだ学ぶことばかりだと感じています。その他、鉄道駅に隣接する土地での開発検討や他社との勉強会、社内でのまちづくりの在り方、今後の会社の在り方の検討などにも積極的に参加しています。 

現在は都内の再開発事業を担当しており、事業を進める以外にも「公共空間をどう使っていくか」「現在ある組織をどう更新していくか」等について議論しています。 

▲担当地区における神社の再建

―単なる事業に留まらず、その周縁部にも目を向けていらっしゃるのですね。「会社の今後の在り方」についても検討されているとのことですが、御社が考える今後の姿とはどのようなものでしょうか。 

(山下)現在弊社では「RIA2030」と題し、2020年から10年後のRIAはどうあるべきかについて、各支社・各部に分かれて検討する場を持っており、エリマネについても複数のグループで話し合いやプロジェクトの実行がなされています。再開発や建物を建てた場所だけではなく、周辺への波及効果や、より広い範囲に影響を与えるような仕組みづくりにも継続して取り組んでいます。 

また、これまで「まちづくりの手法の一つ」として再開発事業を手掛けてきましたが、最近ではリノベーションのプロジェクトも増えてきています。地域の方がなじみのある場所をもっと活躍できる場につくり替えることで、地域の活性化を促しています。さらに、設計事務所の計画系として、今後どのようなことができるのか等、様々なテーマで他社との勉強会も行っています。 

▲湯河原惣湯 Books and Retreat(神奈川県足柄下郡湯河原)のリノベーション事業 
▲リノベーションでまちを再生していくイメージ 

エリマネは社内でも「当然必要なもの」 

―広い視野で再開発事業のこれからをお考えであることがよくわかりました。御社では、「エリアマネジメント」というまちづくり手法について、どのような印象あるいはスタンスをお持ちでしょうか。またこれまでの業務の中で、実際にエリアマネジメントに取り組む場面はありましたか。 

(山下)弊社はこれまで全国各地の再開発事業に取り組んできました。その根本には、課題のある地域に対し、まちの将来像を実現する一つの手法として「再開発」という方法を採ってきたわけですが、エリアのにぎわいづくりやそれを継続する工夫について、先輩たちが考え実行してきています。そのため、社内のスタンスとしては「当然必要なもの」という印象です。 

とはいえ、エリマネ運営の一つであるイベントの開催主体になることは少なく、仕組みづくりやイベント開催のための仕掛けづくりにとどまることが多かったのではと思います。最近は、弊社で開発を担当した天王洲において、地元企業さん達と一緒に実際にイベントの実行を含めたエリマネ活動に取り組んでいる事例もあります。社内では若手を中心として、様々な事例からの学びについて吸収・勉強する場を設けており、こうした活動の拡大を目指しています。 

▲天王洲におけるイベントの様子

個人的には、「エリマネ」という言葉が先行するのではなく、地域のにぎわいづくりや、よい点を生かしていく上でどうすべきかについて、みんなで考え実行していくことが重要なのではと思います。 

「遅れをとらない」ために受講を決意 

―再開発とエリマネの関わり、とても興味深いです。山下さんは昨年度開催された「エリマネプランナー基礎講座」を受講いただいておりますが、なぜご受講されたのでしょうか。 

(山下)世間的にも、また業界・社内でもエリマネが一般的になってきている状況の中で、「遅れをとらないようにしたい」というのが第一の動機です。また、現在担当している再開発事業でもまちの姿が大きく変わろうとしており、「何を残して何を新しくしたいのか」「そのためにどうしたらいいのか」について考える機会がありました。ですので、その一つの方法としてエリマネを学び実行したい、と考えたことも動機の一つです。 

―エリマネはもはや必須のスキル、といったところでしょうか。講座を通して学ぶ上で、事前にご不安だったことや懸念されていたことはありましたか。 

(山下)単純に「仕事をしながら課題ができるだろうか…」と少し心配でした。ですが、実際には講師のみなさまから色々とアドバイスをいただきながら進めていく流れだったので、無理なく夢中になって取り組むことができたと思います。 

もう一つ不安だった点としては、私の現在の業務内容と照らして、「講座で学んだ内容を役立てることができるだろうか」ということでした。地元の人なのか、デベロッパーなのか、行政なのか ― 関わる立場によって見方や目指したいことが大きく変わるであろうことは予想できていたので、「自分の立場で実行に移せるようなことを学べるのかな…」という心配はありました。 

―実際に講座に参加されて、ご感想はいかがでしたでしょうか。 

(山下)講座を受講したことで、エリマネに関する様々なアプローチについて学ぶことができ、自分自身の立場に置き換えて考えられるようになったと思います。また、エリマネについて体系的に学べたことがとてもよかったと思います。座学の時点で、「こういうことが課題になりそうだな」等、現在自分が仕事で担当している地区について思い浮かべながら受講することができました。 

現時点ではまだエリマネに関連する業務には取り組めていませんが、今後地元の方みなさまと考えていく上で、「どのような手順で取り組むのがよさそうか」「自分には何ができるのか」といった点について考えるための土台ができたような気がします。 

―エリマネの体系的な会得が土台となり、実務的な重要性が増した、というわけですね。そんなエリマネの将来性について、どのように感じていらっしゃいますか。 

(山下)重要性は講座を受講する以前から、業務の中でも日々感じているところですので、今後は実務においても活かしていこうと思っています。将来性という点では、全国各地でイベントの企画や運営等の人材が必要とされていると感じます。現地で代わりに運営を担うことには限界がありますので、地元の方々でもイベント運営が可能となるよう、経験を共有していくことが重要かなと思います。 

▲こまきこども未来館(愛知県小牧市)のリノベーション事業
▲まちづくりとしての公益施設「TOYAMAキラリ」(富山県富山市)

―この度はお忙しい中、インタビューにご協力いただきましてありがとうございました。最後に、次年度の受講者に向けてメッセージをお願いいたします。 

(山下)エリマネが一般的によく聞く言葉になっている一方、体系的に学ぶ機会は少ないため、「エリマネプランナー基礎講座」はとてもいい機会だと思います。また、実際に業務の中で実践する必要が来た時に備えて、事前に練習できる点も魅力的だと思います。 

仕事をしながらの受講や課題提出は多少大変な面もあるかと思いますが、十人十色のアプローチを継続的に近くで見られるのも、自分の幅を広げるいい機会だと思います。 

―必須スキルとなりつつあるエリマネについて、この機会にしっかりと「学ぶ」ことの重要性を改めて感じました。本日はありがとうございました! 

エリマネスクール「プランナー基礎講座」(第8期) 受講生募集中!


※現在、クオル(エリマネこ運営会社)では、山下さんが昨年受講されたエリマネスクール「プランナー基礎講座」(第8期)(開講期間:9/23~11/11)の受講生を募集中です。エリマネの初心者は勿論、ある程度実務をされている方のノウハウの整理やブラッシュアップにも幅広く役立つ講座となっており、毎年まちづくりに関わる幅広い業界の方々が受講されています。8/26には、エリアマネジメントにご興味のある皆様が気軽にご参加いただける事前説明会(オンライン形式)も開催予定ですので、是非この機会に受講をご検討下さい。 

過去のエリマネスクール受講者インタビュー

第7期「株式会社URリンケージ」柳田さん
第6期「広島駅周辺まちづくり協議会」吉田さん、野澤さん
第6期「ジェイアール東日本都市開発」岡さん

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