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「モビまち研」シンポジウムに参加!エリマネとモビリティの連携で見出す新しいまちづくりとは

2月28日(水)16~18時、神田スクエア・スクエアホールにて「第2回モビまち研シンポジウム」が開催されました。

webサイト「モビまち研-モビリティとまちのミライ研究所-」より引用


今回のシンポジウムでは、まちづくりの一環としてモビリティ戦略を考えることが、“人と賑わい”中心のまちづくり実現において重要であるとし、「エリアマネジメントとモビリティの連携による新しいまちづくり」というテーマについて3名から話題提供がありました。

後半は2名のパネラーを加えた総勢5名でのパネルディスカッションが行われました。会場には約100名の参加者が集い、オンラインでは約700名の視聴参加がありました。エリマネこ編集部も、モビリティ連携によるエリアマネジメントの最前線に触れようと、現地へ向かいました。

▲神田スクエア・スクエアホールは約100名の参加者で満席に

「モビまち研」とは…2022年秋にスタートした「モビリティとまちのミライ研究会」の通称。日建グループと名古屋大学の「COI-NEXTマイモビリティ共創拠点」が協働で運営している研究会で、”人と賑わい”を中心に据えた先進モビリティでのまちづくりを目指しています。現在は約40の企業や行政機関が参画しています。
👇登壇者とテーマを表示する (Click)

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■話題提供 ①
「池袋のアート・カルチャーのまちづくりとモビリティ」/馬場晋一 氏(豊島区保健福祉部参事)

■話題提供 ②
「大丸有地区スマートシティの取組におけるエリアマネジメントとモビリティ」/重松 眞理子 氏(三菱地所株式会社 都市計画企画部 ユニットリーダー)

■話題提供 ③
「地域まちづくりマネジメントから考えるモビリティ計画とその運営」/
有賀 隆 氏(早稲田大学 理工学術院建築学専攻 教授)

■パネルディスカッション:
モデレーター:森川 高行 氏(名古屋大学 未来社会創造機構 モビリティ社会研究所 教授)
パネラー:馬場 晋一 氏、重松 眞理子 氏、有賀 隆 氏、金森 亮 氏(名古屋大学 未来社会創造機構 モビリティ社会研究所 特任教授)、西田 司 氏(オンデザイン代表 東京理科大学 准教授)

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点から線へ、線から面へ まちの魅力を広げる池袋のモビリティ

【話題提供 ①】
「池袋のアート・カルチャーのまちづくりとモビリティ」/
馬場 晋一 氏(豊島区保健福祉部参事)

▲登壇した馬場 晋一 氏


馬場氏は「池袋のアート・カルチャーのまちづくりとモビリティ」について話題提供を行いました。
現在豊島区が推進する「国際アート・カルチャー都市構想」。2014年、消滅可能性都市の指摘をきっかけとして始まった、空間・国際・文化の3つの柱からなる都市再生構想です。駅を中心に池袋の魅力を区内全域に広げ、区ととしまファンが一体となり、持続発展する都市を目指そうとまちづくりに取り組んでいます。

その構想の中で再生が進められたのは、区内の4つの公園「南池袋公園」「中池袋公園」「池袋西口公園グローバルリン」「豊島みどりの防災公園 イケ・サンパーク」。
新たな交流・にぎわいが生まれたこの4拠点を一日で楽しめる公共モビリティとして、真っ赤なボディの電気バス「IKEBUS(イケバス)」が誕生しました。バスの中にも、劇場都市豊島を感じられるインテリアが施されており、巡回運行を通して、まちの魅力を点から線へと繋げています。

IKEBUSを手掛けているWILLER社は続けて、外から池袋へ人を繋ぐ空港連絡バスと、池袋隣接エリアを繋ぐ相乗りオンデマンドサービス「mobi」の運行もスタート。エリア内、近隣地域、外からの流入の3つがつながり、シームレスな交通が実現しました。

馬場氏は、豊島区にとっても国際文化都市の実現や地域振興の点でまちづくりをい進める力になることが期待されるとし「モビリティにはインサイトが溢れており、人と賑わいのまちづくりに有用だ」と結んでいました。

35年前から続く大丸有のまちづくり 4象限+2レイヤーで都市の価値向上を狙う

話題提供 ②】
「大丸有地区スマートシティの取組におけるエリアマネジメントとモビリティ」/
重松 眞理子 氏(三菱地所株式会社 都市計画企画部 ユニットリーダー/一般社団法人 大手町・丸の内・有楽町地区まちづくり協議会スマートシティ推進委員会委員長)

▲登壇した重松 眞理子 氏


重松氏は「一般社団法人大丸有まちづくり協議会」の立場で話題提供を行いました。1988年にまちづくり協議会の前身が設立され、エリアマネジメントに取り組んでいる大丸有地区。近年ではさらに包括的なスマートシティ化を推進していくため、2020年度に協議会内に「スマートシティ推進委員会」を設置し、既存エリマネとも連携しつつ、そのエンジン役を担っています。

活動内容は多岐に渡りますが、大きくは“民間にあるテクノロジーの力を駆使してどのように「都市機能のアップデート」を仕掛けるか”、また、“新モビリティや人々の行動変容を経てどのように「都市のリデザイン」を描くか”、この2つのアプローチでスマートシティの実現を目指していました。

▲「大手町・丸の内・有楽町地区スマートシティビジョン・実行計画」より引用 P.14


具体的な活用事例として「ポテンシャルの拡大」「レジデンスの増強」「日常」「非日常」という4象限と、「モビリティ」と「移動」の2レイヤーを定義。テクノロジーの力でよりよく「何を」アップデートしたいのかの振り分けが行われていました。

スマートシティやWaaS (Well-being as a Service)の登場で、一気にモビリティとまちの関係性が向上している現状を捉えつつ「様々な資源やステークホルダーとの総合連携で、広範な価値向上が得られる局面であることを一般化していきたい」と締めくくっていました。

詳細は「大丸有スマートシティ」に掲載があります。

車道の集約で「滞留空間」を ~町・里・港を繋ぐ都心の新しい役割

【話題提供 ③】
「地域まちづくりマネジメントから考えるモビリティ計画とその運営」/
有賀 隆 氏(早稲田大学 理工学術院建築学専攻 教授)

▲登壇した有賀 隆 氏


三重県四日市市のまちづくりを手掛けている有賀氏からは、空間価値の向上について話題提供がありました。

四日市は元々港湾都市で、港湾部に多くの産業が集積、内陸部も半導体産業の発達が知られており、その中間に都心部が位置しているそうです。市街地が山に向かって拡大したことで、海から山へ東西方向の交通インフラは充実。課題が残るのは南北軸、名古屋や伊勢の方に向かう道路でした。

まち・さと・みなとをどうつないでいくか――。都心部の回遊性を高めるため、モビリティハブ機能とスマートリージョンの実装化を合わせ、魅力的な滞留空間をつくる計画を策定中とのこと。対象となるのは約70年前に作った戦災復興道路。幅員約70m、長さ約1.6kmの「中央通り」で、車線をすべて南側に寄せ、歩行者のための緑地空間「庭道」を広く設けようとしています。

現在計画レベルではあるものの、四日市市内の路線バス、タクシー、高速バス等々などが集約されると同時に、「庭道」もプロムナードのような滞留空間になっていく構想が展開されていました。
ゆくゆくはPark-PFIを使い、エリアマネジメントのフィールドとして活用する見通し。現状、未利用地のイベントマッチングや価値発信など、都市空間のアップデートへと繋がる情報発信を進めつつ、地域関係者や地元企業とも対話を重ねているそうです。

70年前に戦災復興を遂げた先人たちの意思を大事にしながらも、リデザインに期待が高まる内容でした。

パネルディスカッション:多様な主体をどう巻き込むか

▲後半のパネルディスカッションには金森氏と西田氏が参加


後半は森川氏がモデレーターをつとめ、新たに金森氏、西田氏がパネラーとして加わりパネルディスカッションが行われました。

濃厚な発表内容に対して、金森氏・西田氏を中心に沢山の質問が飛び交いましたが、その中でも「多様な主体をまちづくりやモビリティにどう巻き込んでいくか」というテーマでは、行政区域にとらわれないまちづくりの範囲の設定や、様々な立場の主体でまちの理想像を描く意味などが語られました。

▲それぞれの立場や視点に基づいた多様な意見が飛び交う


また「モビリティの事業モデルをどう見出すか」というテーマでは、数年先の可能性を見越した“準備”について意見が出ました。

金森氏は「5~6年先のニーズに応えるためには、住民の理解や利用意識向上を地道に働きかけていく必要がある」とし、数年規模の実証実験の重要性や継続の難しさについて提議していました。

西田氏は豊島区のIKEBUSを通じた劇場都市づくりから新しい事業のきっかけが生まれる可能性を示唆し、モビリティの未来像が広がる展開となりました。

最後まで議論は尽きませんでしたが、気づけば終了時刻に。エリマネとモビリティの関係性の深さに気づかされる充実した2時間でした。
今回“人と賑わい”を活性化する様々なモビリティ戦略に触れ、移動の最適化を考えることは、エリアの魅力に新たな価値を見出せると改めて認識しました。また、誰にとっても不可欠なモビリティだからこそ、人々の繋がりや交流をもたらすツールになり得るとも感じました。

みなさんも、身近なまちの取り組みや、新しい交通に、ぜひ目を向けてみてください。

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