エリマネこ

まちを、エリアを楽しくするお役立ちメディア

登戸・向ヶ丘遊園|区画整理の余白から育つ まちのつながり

小田急線で新宿まで1本、JR南武線との結節点であり利便性も高い登戸・向ヶ丘遊園エリアは今、開発が進み新しい風景に変わっていっています。 まちづくりの過程でキッチンカー出店や道路の活用、空き地を活用したイベントなど、多様な活動を推進している区画整理事務所の皆さんへお話をお聞きし、登戸・向ヶ丘遊園の今に迫りました!

▲『ハレの日』2023年開催の様子 (市提供資料より)

取材先川崎市まちづくり局 登戸区画整理事務所のみなさん
柴 次郎さん        ・・・工事担当課長
永森 雄さん        ・・・工事担当係長
竹田 真由子さん ・・・補償担当
(肩書は2024年3月の取材時のもの)

区画整理のあらましと まちの余白を活かす試み

柴さん
もともと登戸・遊園エリアは、幅員2~3m位の細い道がくねくね走っている場所が多いような地域でした。下水道もなかったので、くみ取り式の便所や浄化槽で対応しているところがほとんど。衛生上よくないという点と、消防車や救急車が入れない状態が大変だというところもあって、区画整理事業が始まりました。

竹田さん
昭和63年の事業計画決定時から延べ37haの区域に対して整備を行い、2年後の令和8年3月末に基盤整備が完了予定です。

▲柴さん
2024年4月時点 進捗図(市HPより)

—— 登戸では整備された区画や通りを中心に、まちづくりの活動がいくつも生まれていますね

竹田さん
地域の方と一緒に、区画整理を契機とした「居心地がよく、歩きたくなる通り」を目指して、登戸2号線や、向ヶ丘遊園の駅前にある登栄会商店街等さまざまな場で、勉強会を重ねてまちの将来像を定めていきました。

皆さんと話した内容をもとに、車道の一部を歩行空間に組み込んだり、バス通りで相互通行だったところを一方通行化したりしながら、通りと空間の最適化について試行錯誤しています。

整備で生まれた余剰空間にはベンチやテーブル、植栽を置いて、散歩や買い物の途中で一息つけるような憩いの空間をつくっています。より魅力的な通りの実現を探っているこれらの活動を登戸・遊園こうしん中と呼んでいます。

▲通りの憩いの場になっているベンチ(市提供)
▲ちょっとした休憩スペースとしても(市提供)

竹田さん
「今後このまちに入ってくる方にも想いを共有できるとよいね」という話から令和3年4月に『登戸2号線沿道まちづくりコンセプトブック』も作りました。登戸2号線沿いは、通り沿いの建物の2階がオープンテラス、路上にはパークレット(路側のポケットパーク)にも似た、憩いの空間がある通りにして、ゆくゆくは道路をイベント開催の場として一体的に利用できるようなストーリーも掲げています。実現化にあたり、同年から社会実験も始めています。

時期を同じくして建物の解体がピークを迎え、空き地が沢山広がっていたり、新築ビルのテナントに隔たりがあったりしていることも課題にありました。市と包括連携協定を結んだ小田急と一緒に、空き地を利用してなにか活動できたら、と始まったのが登戸・遊園ミライノバ です。
キッチンカーを誘致したり、地元商店街やまちづくり団体の方に声をかけてイベントを始めたりしました。

▲こうしんMAP(市提供)
▲まちと一体化した2号線の風景(市提供)

まちの人づてに広がっていった活動

—— もともと現地に手を挙げて下さる方がいたのか、市のビジョンに基づいて人を探したのか、どちらが近いでしょうか?

永森さん
令和3年の時点で、川や大学、鉄道の結節点や市内屈指の緑地を生かした『登戸・向ヶ丘遊園駅周辺地区まちづくりビジョン』の策定準備はしていました。その中でハードだけでなくソフトにも注力することは謳っていましたが、実際には現地での調整と同時にやっていたというのが正解かもしれません。

—— それぞれの活動はどのように始まったのでしょうか?

竹田さん
ミライノバの活動を開始した時点では、キッチンカーを誘致する『イツモの日』という活動と、1年に1度の大型イベント『ハレの日』という催しを地域の人と一緒にする事から始めました。その後、もっと皆さんにミライノバを知ってもらい、日常的な活動の場を増やしていきたいと考えたんですが、私達は場所を用意できても、使ってくれる人がいないと何もできない悩みがありました。
そんな時、キーパーソンとなるグラフィックデザイナーの方との出会いがありました。駅前の使い方を一緒にあれこれ考えたり、高架下で『住民本屋』というイベントを実施してもらったりしながら、まちに対する考え方を重ねていったように思います。徐々に人づてに活動の話が広がって、今のような形になりました。

—— まちの人づてに実際に活動が広がっているということが、すごく魅力的ですね。

永森さん
現れた人が叶えたい事を叶えられるよう活動できている、という言い方が、もしかしたら近いかもしれません。

▲竹田さん
▲ミライノバの一環『住民本屋』

人と場が育む地元との関係性とその意味

—— にぎわいを生み出す中で、地元の関係者さんたちと一緒に作り上げる機運や雰囲気は自然にできたのでしょうか

永森さん
区画整理を進めている中で、地域主体のまちづくり企画や商店街活性化の取り組みが既にあったので、市や小田急が加わりながら、その試みを駅前空間の利活用へ広げていっている形ですね。
竹田さん
新しい試みはどう既存と違うのか、どういった連携ができるかを少しずつ、常に話しながら、一緒にイベントをつくり上げることによって、関係性が築けていった印象です。

▲『イツモの日』のぼりと園芸部(市提供)
▲地域とのコラボ企画『ぐちゃぐちゃ遊び』(市提供)

—— だんだんと関わる人が増えている最中と思いますが、その中でよかったと思う時や、一方で難しいな、と感じる時は何かありますか?

竹田さん
「よかった!」と思う事の方が以前よりずっと多い気がします。関わってくださる方々からも「色々な人と知り合えてよかった!」との声が寄せられますね。
自分たちは場所を提供しているだけなのですが、そこが1つの出会いの場になって、新しい企画につながっていったりとか、相乗効果で良くなっている形がすごくいいと思っています。

永森さん
公共空間には、ふらっと寄れる気軽さがあります。加えて、道や空き地を“使える”という事が、誰かとつながれる場の提供になっているのかもしれません。

竹田さん
活動に参加してくれた方からも、活動がどのような効果を生んだかより、「まちづくり活動を続けている事自体が良い」という声をいただいています。 以前、「まちに開かれた会議」としてミライノバの活動の紹介や交流を目的にした『登戸・遊園ミライノバオープンミーティング』を開催したんですが、まちで活動している人と出会えたり、参加者同士のコラボ企画が生まれたりと、そもそもこの試みをする事自体がとても大事だと感じました。

永森さん
ハードにおける憩いの場づくりは、最終的に維持管理の話にたどり着きます。例えばゴミの話や騒音の話など。ふつうに通行する目的だけの道路であれば出てこなかった話が発生しますが、トラブル発生後に行政がすべて対応する事は難しい。まちの活動を通して、その場へ意識を向けていただくきっかけがつくれれば、と思っています。

▲永森さん
▲植栽のハーブを使ったお茶会はコミュニティ醸成の一面も(市提供)


—— 自分たちで全て進めるという形ではなく、住民の方に入っていただきみんなでやろう、と余白をつくろうとしている竹田さん、永森さん、柴さんの姿勢がとても素敵に思いました。それが、地元の推進力とうまく循環しているように感じます。

柴さん
当初は区画整理事業だけをひたすら進めていたのですが、事業が進む中で、昔はどうだったのか、まちは本当によくなったのか、という声が聞かれるようになりました。その声をなんとかしたい、という想いから、当時の職員が先頭を切って、こういった人をつなぐ活動を進めてきています。

永森さん
ある種、それはこれからの課題でもあるかもしれません。人のつながりは、そのポストに人がいればすむ訳ではないので、異動やまちの人の代謝があった時に維持していけるかは、わからないところもあります。

ゴールに向かう区画整理、その先へ

永森さん
区画整理の進捗に伴い、空き地自体は今後なくなっていきます。既存の公園や公共の場はこれまで通り活用しつつ、道路や余白の空間などに注目し発想をふくらませて、新たな組み合わせや活動の機会を創出できるといいですね。

竹田さん
4月からは使用できなくなる高架下も、定期的に使ってくれる方がいました。そういう方達が、私達では思いつかないような利用方法を教えてくれます。実は周りにその機会がたくさんあるかもしれないので、今後もまちを活用できるようにしていきたいと思っています。

—— 区画整理がもうゴール地点に近く、公共的な空間がまだないからこそ、皆さんが目を凝らしてまちを見て、使うための工夫が生まれているのかもしれないですね。

▲終始楽しそうにお話し下さった皆様

—— 最後にエリマネこ読者へ一言お願いします!

永森さん
ぜひ、登戸・遊園のまちを使ってみてほしいです。
外側から見た印象と、一緒に参加した後の気持ちは違ってくるかもしれません。

竹田さん
そうですね。とてもいろいろな活動が展開されているので。

柴さん
令和7年度末に基盤整備が完了しますが、その間もどんどんまちが動いています。1年後の風景も、2年後の風景も変わっていると思いますので、ぜひ今来てほしいですし、今後とも見守っていただきたいです。

—— ありがとうございました!

日々展開されている登戸・遊園エリアの活動の詳細はこちら↓
ミライノバ Instagram
のぼりと園芸部 Instagram

最新の記事をメルマガ配信中(不定期)

Twitter

情報登録を受付中!

Return Top