全国各地で、エリアマネジメントの事例やまちづくりの取り組みが増えてきており、民間や行政、様々なプレイヤーが生まれています。一方で各地課題となっているのが担い手や次の世代へのナレッジの引き継ぎ不足です。こうした中で全国エリアマネジメントネットワークは、若手人材の育成と称し、AMU35(アム35)の取り組みをスタートさせています。今回はAMU35の活動についてをレポートしていきます。
ところで、全国エリアマネジメントネットワークをご存知でしょうか。
全国エリアマネジメントネットワークは、全国各地で活動するエリアマネジメント組織の方々が中心となって、2016年に設立したネットワークです。
(全国エリアマネジメントネットワークより引用)
私たちのネットワークはエリアマネジメントの実践者や研究者、行政の方など、エリアマネジメントに係る多様な人々が集まり、繋がる場であることを一つのミッションとし、更にはここに集う人材や知識の蓄積からエリアマネジメントの更なる発展を進め、社会に発信、これからのまちづくりに還元していくこともミッションとしています。
交わる/広める/深める/支えるといった4つの事業を軸とし、イベントや視察会、研究など様々な活動や取り組みが行われています。こうした中で次の世代のエリアマネジメント実践者の活動を育てるための取り組みがAMU35です。
2021年6月に立ち上がり、エリアマネジメントに関する様々なトピックに対して若手の実務者が意見を交わし、具体的なアクションを紡いで(編んで)いきます。
参加対象となるメンバーは、もちろん35歳以下。
※毎年4月1日時点で35歳以下の全国エリマネ会員、かつエリアマネジメント団体の
活動に職務として携わる者。(メンバーは毎年4月更新)
AMU35のロゴ
(AMU35メンバーミーティングより引用)
まだ1年足らずしか活動していませんが、コロナ禍での活動に苦しんでいる団体も多く、オンラインでのミーティングであっても、意見交換やメンバー間での交流は盛んに行われていました。
(AMU35メンバーミーティングより引用)
AMU35のこれまでの活動
・メンバーミーティング vol.1 札幌駅前通りエリア
・メンバーミーティング vol.2 神田淡路エリア
※2回を通して、①知恵の共有 ②アフターコロナを見据えた活動 ③世代間交流の分科会が誕生し、分科会での意見交換を行いました。
・メンバーミーティング vol.3 新虎通りエリア(ほこみち制度について/公開空地の利用について等の意見交換)
・メンバーミーティング vol.4 梅田地区エリア(コロナ禍でのイベントについて/情報発信について等の意見交換)
以上のように複数回のミーティングを重ねていきました。とはいえ、オフラインでの視察会といった対面での交流希望もあったため、今回初めてのフィールドワークが実現しました。
今回は視察先として以下4つのエリアを選定し、2日間に分けて実施。
視察①二子玉川(世田谷区)、視察②丸の内(千代田区)視察③神田淡路町(千代田区)、視察④新虎通り(港区)
それぞれについて、かいつまんでご紹介します。
写真:AMU35提供
1日目 視察先1 二子玉川(世田谷区)https://futako.org/
二子玉川エリアでは、2020年に地元の商店街振興組合と協働し、商店街と広場前の路上を利用した「二子玉川まちみちテラス」を実施しました。日曜・祝日の歩行者専用道路の時間帯に限り、テイクアウト品を飲食できるテラス席や商店街のお店の物販スペースを設け、コロナ感染予防対策として密集を避けながら、新しい道路の活用に取り組みました。
世田谷区兵庫島公園の一角で「Mizube(水辺)に Fun(楽しいこと)を生み出す Base(基地・拠点)」をコンセプトに掲げたまちづくりプロジェクト「Mizube Fun Base(ミズベファンベース)」を 2021 年から展開しています。
1日目 視察先2 丸の内(千代田区)https://ligare.jp/
丸の内エリアでは、2022年6月1日に「有楽町『SLIT PARK』」がオープンし、キッチンカー、路外ショップによる飲食・物販のサービス、アートの設置、イベント企画の実施などによって、出会いや交流を促進し、街の魅力度向上につなげることを目指しています。
2019年から毎年開催されている「Marunouchi Street Park」は、都市の広場・公園的空間のあり方を検証する社会実験の場として実施されています。今年は「みんなのMSP」をコンセプトに、多様な人々が日常的に利用できるような設えをつくり、憩いのスポットになっていました。ピクニックを楽しめるゾーンやライブラリー、車いす利用者や幼児も座れる椅子を設置した「みんなのテーブル」、ストリートピアノ、卓球台など好奇心をくすぐる仕掛けが随所に見られました。
2日目 視察先3 神田淡路町(千代田区)https://www.waterras.com/index.html
神田淡路エリアでは、学生の力を地域資源とみなし、まちづくりに積極的に取り入れる仕組みとして導入されたもので、神田に根ざして生活しながら継続的に地域活動に参加する学生のためのマンションがあります。大学の単位のように、淡路エリマネが行う地域交流活動で、一定のポイント以上を取得することが来期の再契約(入居継続)の条件になっていることが特徴です。
他には、WATERRAS BOOK FESといったイベントを学生たちと一緒に企画し運営をしたり、 FREE AWAJI BOOK 8890といったフリーペーパーによる情報発信などに注力されていました。
2日目 視察先4 新虎通り(港区)https://shintora-am.jp/
新虎通りでは、ストリートファニチャーの設置やキッチンカー、インフィオラータによる中の島の活用、コンポストをきっかけとしたコミュニティづくりなど、新虎通りの歩道空間を活用した居場所づくり、ないしはSDGs を考えるきっかけとなるような社会実験など、さまざまな取り組みを実施しています。
新虎通りに面するまちの賑わい施設「新虎小屋」はまちづくりの情報発信拠点として地域の人々に利用されてきましたが、2021 年 10 月からは、SDGsの取り組みや次世代技術を体感できる街なかのショーケースとしてリニューアルしました。
今後の取り組みにも期待!
参加者にアンケートを取ってみたところ、以下のようなリアクションも頂けたそうです。
『どのエリアもエリアごとの特色やステークホルダーを活かしたエリマネをされているところを実際に体感できて、本当に勉強になりました。また、若い世代の方が各エリアで活躍されている姿を見て、非常に良い刺激をいただきました。』
『地区事例がたくさん見れたことはもちろんですが、実際に業務に携わる若手の本音や苦労話を聞けたことが大きかったです。きっとそれぞれの地区で、同じような悩みを持っているんだなと感じました。このつながりを続けながら、お互いに前例をつくりあげて影響しあえたらいいなと思います。』
『今回は、同世代と繋がることができたことが嬉しく、どのエリアでも似たような悩みを抱えながら頑張っていることに大変勇気づけられました』
今後もメンバーミーティングは継続して実施していく予定とのこと。第2回目となるフィールドワークを望む声も上がっているそうですので、今後若手を中心としたエリマネコミュニティが広がっていくことを期待しています。今後のAMU35の取り組みにぜひご注目ください!