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物語を紡ぎながら広場をつくり、広場が人とまちを育てていく

今回のインタビューはまちのにぎわいづくりに欠かせない場づくりや空間づくりを手掛けられているランドスケープデザインを行う株式会社スタジオゲンクマガイ代表の熊谷さんです。「物語を紡ぐ」という言葉を大事に活動しながら、場づくりや人のコミュニケーション活動が生まれる広場設計をするだけでなく、にぎわいを生み出す活動をしています。まちづくりにおいて、人の交流が求められるようになっている昨今、これからの広場の役割、つくりかたのヒントについてお聞きしました。

物語を紡ぐ、熊谷さんの原点

熊谷さんが独立前に所属していたアートスタジオでの経験から、熊谷さんは人間の多様な物質を作り出す能力に面白さを感じ、その後会社のモットーになる「物語を紡ぐ」に着想しました。スタジオ解散を機に独立。社会性のある日常づくりの実現を目指し、ランドスケープデザイナーとしてその道を歩み始めます。
グラフィック、団地再生、企業のミュージアム、駐車場の壁面などデザインのジャンルは多岐にわたりますが、依頼の背景や物語を読み解き、その軸から表現をするということは一貫しています。

時間ととも利用者も風景になっていく空間づくり

横浜のみなとみらい21地区にあるグランモール公園の再整備プロジェクトでは、水をテーマに波型のベンチを設置したことで、自由きままに波にのるように利用者に使い方を委ねることを目指したのだそうです。
例えば、朝は近くの小学校に通う子どもたちの通り道になり、お昼にランチを食べる会社員、夏の午後は子どもたちが水遊びした後の洋服を干す場所に。そして夜になれば宴会帰りのワーカーが休憩し、深夜にはスケボーの練習場にもなります。ベンチとして作るとベンチとしてしか使われなくなるので、空間や機能を住み分けないようにすることで、多様な使い方が生まれて風景が固定化されないといいます。

広場を通じて、使い手がクリエイティブになっていく

利用者によって空間の使い方が変化していくもうひとつの事例として、郊外のベットタウンとして誕生した横浜市の南万騎が原駅前広場「みなまきみんなのひろば」があります。駅前広場のリノベーション前は高低差4メートルを埋めるように長い階段が無造作に設えられ、その周辺には放置されて枝葉が伸びきった街路樹があったため、駅とまちが分断されていました。熊谷さんに求められたのは、周辺住民の高齢化による駅の利用者が減少している課題を踏まえ、駅前広場を誰でも気軽に利用できるように広場を設計することでした。近隣住民への入念なヒアリングを行っていく中で見えてきたのは、絵画教室などの少人数で行うちょっとしたスペースを必要としている方が多いことでした。少しでもたくさんの方に借りてもらうため、利用する面積を大小さまざまな雛壇状の階段に設えることによって、レンタル費用をぐっと下げることに成功。現在では広場の特性を生かし階段を利用した雛祭りの展示やワークショップのイベント「みなまきひなまつり」を行ったり、階段を鑑賞席とした野外映画鑑賞会を開催したりと、多世代が使い方の可能性を発想してどんどんクリエイティブになれる空間になっていたそうです。

広場を自分ごとにするために仕掛けていくことも

同じく横浜市にある左近山団地では、約4,800戸もある巨大団地の広場をリノベーションしました。その際に、ただ人が集まりやすそうな空間をつくるのではなく、“みんながやりたいことをやれる広場”にすることを目指しました。住民さんにアイデイアを募ると、43個ものアイデアが出てきたとのこと。麻雀をやりたい、兄弟がうるさいから落ち着いて宿題したいなど、団地内の関係性を崩さないような空間設計を意識しながら、自分ごとのテーマをしっかりと形にして実現まで落としこんでいくそうです。ランドスケープデザイナーとして空間をデザインするだけでなく、ときには自主イベントの企画やイベントのお手伝いをしたりなど、人と人の交流が生まれる交流の空間づくりを自ら動き、仕掛けることもあります。

多様な空間がまちを育てる

今後は広場に限らず、違うタイプのパブリックスペースやそれ以外の空間も多様になるべきだと語る熊谷さん。時代に合わせて移り変わるまちの形態や機能を、ランドスケープから空間全体、そしてそこに働く・住まう人の想いまでスケールアウトしていくことが、まちの空間をつくる上で大事だと考えているそうです。熊谷さんは「世の中に可能性は提示されているから、まずはやってみる、外に出てみる」ことを大切にしています。

インタビューを経て

冒頭でもあったように、広場だけでなくいろんなものをつくることが仕事という中で、まちやものに対する想いや地域の素材を「物語」として紡いで、その先にある未来を一緒につくっていく。話を聞き終えた時にその力を実感しました。
ただつくるではなく、使い手を想像しながら、あるいは利用者の日常をじっくりと観察して、見えてくるものをしっかりと形にするから、利用が継続する。利用者も溶け込むような日常の風景づくりに対しての念入りな姿勢が伺えました(エリマネポータル編集部)

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