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仮囲いアートミュージアムで、まちの新しい価値創出を目指す「ヘラルボニー」

JR高輪ゲートウェイ駅イベント会場で展示されたアート作品

新しい建物が着工すると、数ヶ月間、長いものだと数年真っ白い壁の仮囲いが建てられます。
この「仮囲い」に着目し、アートの力でまちの景色を変えていこうとしている活動をご存知でしょうか。その活動の名前はヘラルボニーが手掛ける「全日本仮囲いアートミュージアム」です。

全日本仮囲いアートミュージアムとは

建設・住宅を守る「仮囲い」を、新発見ができる「ミュージアム」と捉え直してみる。地元の福祉施設には、私たちが知らない創造表現が眠っている。数ヶ月間、突如として現れる地域に根ざしたソーシャル美術館。全日本仮囲いミュージアムプロジェクトが、はじまりました。
「全日本仮囲いアートミュージアム」は、建設・住宅を守る「仮囲い」を、新発見ができる期間限定の「ミュージアム」と捉え直す地域活性型のアートプロジェクト。地元の福祉施設に所属する知的障害のあるアーティストが、あなたの街と近隣住民の感性を彩ります。

(引用先: https://www.heralbony.jp/service/karigakoi-art/

仮囲いの利活用より、新しい価値を創出するヘラルボニー

私たちもよく目にする壁は、建設現場と私たちの生活を区別し、安全に守る大切な役割を果たしている一方で、無機質で殺風景な印象を与えてしまいます。
例えばどんなに話題性のある最新の施設でも、建設中は白い壁で覆い尽くされ、新しい建物が立つワクワク感や期待感は薄れてしまいます。
こうした仮囲いをもっと利活用すべきと考え、新しい価値を創出しているのが、ヘラルボニーの全日本仮囲いミュージアムプロジェクトです。今回は本プロジェクトの責任者、泉さんにお話をお伺いしました。

ヘラルボニーは「異彩を、放て。」をミッションに掲げる福祉実験ユニットです。障害のある人にも無数の可能性があることを社会に送り届ける取り組みを行っており、仮囲いアートミュージアム以外にも、障害のあるアーティストが織りなすデザインをモチーフにしたネクタイやジャケットを取り揃えるアパレル事業や各社がもつコンテンツをかけ合わせた事業を行うなど、福祉を傘にモノ・コト・バショを展開しています。

ヘラルボニー全日本仮囲いプロジェクト 泉さん

仮囲いアートミュージアムはなぜ生まれたのか。その原点を探ります。

ヘラルボニーの代表と副代表は双子の兄弟で、二人には、自閉症の兄がいます。この三人兄弟で過ごした経験が後にヘラルボニーを創立するに至った原点となります。
副代表の松田文登さんと泉さんは互いに東北出身ということで、もともと友人関係にあったといいます。
泉さんが岩手県大船渡で活動のお手伝いしていた際、前職をゼネコンに勤めていた松田文登さんは、復興中の岩手県に仮囲いが続く殺風景さに虚しさを覚え、この風景を変えたいという気持ちからスタートしたものだといいます。

仮囲いやヘラルボニーの事業がスタートした当初は、アートプロジェクトに対しての理解が得られなかったのだといいます。「無料だったら掲示してもいい」と言われることも多く、“福祉=ボランティア”という扱いが蔓延していたのかもしれません。しかし松田文登さんは、そこからの逆境を粘り強くビジネス展開していきました。

ヘラルボニー本社所在地は岩手県。写真は岩手県陸前高田市

福祉はNPO等が活動をしていると考えられがちですが、ヘラルボニーはあくまでもビジネスとして、正当な評価と対価を受けるために関わることを決めているそうです。当然仮囲いプロジェクトも事業に共感し、アーティストへの対価を企業からいただき、ビジネスとして成立させていきます。

なぜ仮囲いアートミュージアムに協賛し、まちのソーシャル美術館を期間限定でオープンするのでしょうか。

これまで不動産会社、建設会社、金融機関、行政と幅広く仮囲いプロジェクトを手掛けていますが、泉さんのお話を聞いているうちに、まちのにぎわいをつくっていると捉えることができます。
私たちがよく目にするまちづくりの一貫で頻繁に行われているのは、ワークショップやイベントですが、仮囲いにアートを展示し、街行く人々が足を止めてアートを見る点で、にぎわいをつくっているという見方ができます。

このにぎわいづくりおいては、真っ白い無機質な壁ではなく、飾ってあるアートに注目することで、建設中の建物に愛着がわくといいます。

個性的な作品がズラリと並んでいる様子は意識をしていなくても目に飛び込んできます。人々の日常風景の一部に入り込むことによって、自然と作品に愛着がわき、作品の向こうで行われている建設中の施設を知るきっかけになります。施設が完成するころには、「アートが飾ってあった施設だ」という認識に変わり、施設を覚えてもらいやすくなります。

また、ソーシャル美術館という仮囲いを介して、まちの人のコミュニケーションの場になれば、にぎわいづくりの一助を担っているといえるでしょう。 泉さんの「仮囲いは広告ではなく、目指すところは美術館」という言葉がよく分かります。広告では、単に消費されてしまうものが、アート作品ということで思い出に刻まれることでしょう。

全日本仮囲いプロジェクト紹介。WEBサイトより引用

仮囲いの展示で終わらない、活動を広げる・繋げる取り組み

こうした仮囲いは展示するだけでなく、展示していた作品をサスティナブルの観点から再利用し、バッグ等に作り変え販売をしています。アップサイクルという考え方に基づいて新しい製品に生まれ変わることで、展示で得た感動を、今度は身につけて楽しめるという活動です。

また、現在は仮囲いだけでなく、百貨店などのショップテナントの工事中のパーティションにもアート作品を展示するなど、活動の幅をさらに広げて、デッドスペース活用して憩いの場を生み出しています。

アップサイクルされたwall art tote bag
アップサイクルされる前、展示されたアート作品

アートを通した地域の魅力づくり、日本全国へ届けたい想い

仮囲いにアートを設置する際のポイントがあります。同じ作品ばかり並べては美術館とはいえません。地域の色を出すために、なるべく地元出身のアーティストを起用することを心がけており、少しずつ地域の魅力づくりを行いたいと語ります。

今回取材時に訪れた東戸塚の百貨店で行われていた展示でも、神奈川県にゆかりのあるアーティストの作品を展示していました(現在は終了しています)。昔東戸塚訪れたこともあり、アーティスト本人も馴染みのある場所に自身の作品が展示され、嬉しかったと感想もありました。

このプロジェクトでは、北は青森、南は沖縄からまで、全日本を彩るようにもなってきました。今後の展望として、全日本仮囲いプロジェクトの名前の通り、日本全国47都道府県に仮囲いミュージアムを設立したいと話す泉さん。

真っ白い仮囲いを見つけたときは、ヘラルボニーによるアートプロジェクトがあったな~なんて想像をしてみてください。きっと近い未来、至るところでアートプロジェクトが開催されていることでしょう。

▼開催中のソーシャルアートミュージアム

【Wall Art MUSEUM STORE 開催概要】
◎期間:2020年12月10日(木)~(約1年間)※時期によって、掲出場所が変化します。◎掲出場所:渋谷、原宿、表参道、銀座、六本木地域の未稼働広告約40箇所
●掲出場所について https://heralbony.roadcast109.com/wall-art-museum-store-map

▼その他、掲出場所について
https://www.karigakoi-art.com/museum/

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