兜町といえば言わずもがな、東京証券取引所の所在地です。円筒型の電光掲示板に株価が表示されている場面はニュースでおなじみのシーン、一度も見掛けたことがないという方はほとんどいないのではないでしょうか。今回はそんな金融のまち、兜町で異なった経歴を持つおふたりが手掛けているエリアマネジメント活動をご紹介します。
今回お話をお聞かせくださったおふたり
今回インタビューをしたのは平和不動産の荒井さんと、活動を一緒に盛り上げているTOE THE LINEの鈴木さんのお二人です。
荒井さんは、平和不動産が進めている兜町や茅場町での再開発事業と並行して、まちににぎわいを生むためのイベントや情報発信、活動拠点の運営といったエリアマネジメント活動を行っています。このまちに根差した企業がどういうことが出来るのか、模索されながらエリアマネジメント活動を担当されています。これまでは全く異なる業務に携わっていたことから、「いままでのキャリアと縁もゆかりもないまちづくりの仕事」とお話しされるように、最初の1年は手探りの日々が続いたそうです。
鈴木さんは大手旅行会社を経て独立。独立の準備時に避けて通れないお金と格闘している時に金融のまち兜町と出会ったことがご縁となり、荒井さんが推進しているエリアマネジメント活動に関わるようになりました。様々なイベント活動が紹介されている情報発信WEBサイト「兜LIVE!」の運営や、兜町で実施しているイベントの企画・運営など、兜町のにぎわいをうみだすための活動を荒井さんと一緒に行っています。
金融のまちで、どうしてエリアマネジメント活動?
兜町のまちの歴史には「はじまり」が由来することが多く、実は明治時代以降に銀行、電力、郵便局等のくらしを支えている事業が創業した場所なのだそう。江戸時代には二つの川に挟まれた立地だったことから水運でまちが栄えた、ということが起点となっているそうです。
金融のまちとして、戦後の兜町には多くの証券会社が立ち並び高度成長期を牽引し、特にバブル期には株券売買立会所に多くの人々が街中にあふれていました。しかし1990年代に更なる発展を目指して株券売買にシステムが導入されましたが、皮肉にも立会所で働き、兜町に活気を生み出していた人たちの多くが兜町を去るという結果となってしまいました。荒井さんは「かつてのにぎわいをこのまちに取り戻すことが出来たら。その思いが活動の根本になっています」と、エリアマネジメント活動をスタートさせたきっかけの話をしてくれました。
兜町の特性を活かしたイベントでまちを盛り上げていく
今回お話を聞かせて頂いたカフェ&ビジネスサロン「CAFE SALVADOR BUSINESS SALON」もイベント会場のひとつですが、このカフェは平和不動産がオープンさせ、運営を行っています。兜町に新たなにぎわいをうみだすべく、毎週多様なイベントが開催されていますが、イベントには大きく三つの種類があります。
1つは、金融のまち兜町ならではのお金にまつわるイベントです。例えば、FinTechサービスを提供するベンチャー企業の勉強会や、確定申告等のセミナーなどです。兜LIVE!運営チームがファシリテーターとなり、様々な金融をテーマに開催をしています。
兜LIVE!主催以外には、運用会社や経済系メディア、女性金融コミュニティ等が積極的にイベントを開催し街に賑わいをもたらしています(鈴木さんは、啓蒙を目的とした女性金融コミュニティの運営にも携わっています)。
2つは、日本酒や植物をテーマにした文化系のイベントです。兜町には、水運を活かして栄え多くの酒問屋が存在していたり、植木市で賑わっていた歴史があります。その地域特性を活かして開催している日本酒イベントや植物イベントは、人気になり定期開催しているそうです。荒井さんと同じチームの藤咲さんいわく、日本酒イベントでは「コアなファンが多い定期イベント」で、日本全国の蔵元を招いて、酒造りの想いを語る会やきき酒を楽しむイベントを企画しているそうです。また、2018年に開催した、全国から10の酒蔵と10店舗の有名飲食店のコラボレーションによる『真夏の夜の夢』と題した日本酒イベントでは、募集人数250名を大幅に上回る参加があって熱気にあふれたイベントになったそうです。
3つは、金融関係者が多くあることから通な食のまちという顔も持っており、まちの飲食店店主の話を聞ききながら食事ができる「ごはん会」というイベントも開催しています。「この企画は地域の内需掘り起こしをしていきたいという想いで開催しています」と荒井さん。荒井さんと共にまちのネットワークを開拓している中島さんは飲食店店主と平和不動産をつなぐ役割だそうで、「ビジネスマンがいなくなる土日は定休日としていた店舗も、このイベントをきっかけに予約してもらえればお店を開けますと言ってくれるお店も出てきました」と嬉しそうに話をしてくれました。まちの顔となるひとがいることの大切さを感じさせられます。
後半では、新たな取り組みやこれからの兜町について詳しくご紹介します。
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