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ものづくりの老舗企業コトブキが考える、利用者に寄り添ったパブリックスペースの作り方

エリマネの活動拠点としても重要な位置を占める公園やパブリックスペース。そのような場所に置かれているあのベンチ、駅前で私たちを出迎えてくれる街地図のサイン、自動車の侵入を防ぎ歩く人の安全を確保する車止め。街中にそっと佇み、私たちの街や暮らしを支えるこれらファニチャーを手掛ける企業をみなさんはご存知でしょうか?

大正5年の創業以来、家具・遊具など様々なモノづくりを通して、多くの場所で人々に憩いや賑わいを提供してきた株式会社コトブキ。今回は、コトブキでパブリックスペースを考える2名の方に、お話を聞いてきました。お相手は、上地さん(ファニチャー事業部)、井上さん(株式会社パークフル:コトブキ関連会社)です。

井上さん(左)、上地さん(右)

“過渡期” としての公園

かつては行政の管理下にあった公園。指定管理者制度やPark-PFIなどの制度改正により、公園の運営が少しずつ民間へとシフトされていきます。そうした中で、公園に対する捉え方も”ベンチと遊具があれば十分“といった考え方から、イベント利用等の柔軟性や新しい使い方の可能性が探られている”過渡期”であると肌で感じていると上地さんは話します。例えばベンチの設計に際しても、ただ座る機能だけのハードの面を考えるのではなく、その先にある、集まる/空間や賑わいを作るキッカケを提供するといった”ソフト”の面も意識しているそうです。2020年2月に発売する「COMM(コム)」もそんな価値観から生まれた新しいファニチャーシリーズとのこと。

使い手の目線に立って作られたファニチャーの形状が、そこに集う人々の過ごし方をそっと誘導し、コミュニケーションと新しいアクティビティを生み出し、その小さな行動1つ1つの集積がパブリックスペースでの賑わいを作ることに繋がっているのかもしれません。

日本全国37か所の公園とパブリックスペースへ滑り台をお届け!

子どものころ、滑り台から下りる瞬間に心ときめかせた記憶がある方も多いのではないでしょうか。公園でしか味わえないあのドキドキ。コトブキは、「公園をもっと面白くする」をテーマに、人気の滑り台を設置したトラックで全国の公共公園を駆けまわる“パークキャラバン”を、実証実験として2019年の夏に実施しました。

そこで発見したのは、楽しむ子どもたちの笑顔はもちろんのこと、「うちの公園にも来てほしい」「もっと長く居てほしい」という行政からの声だったそうです。公共空間を”いかに使っていくか”という視点で考えた場合、柔軟に遊具を展開することによって賑わいを作り出していく取り組みには、一定の需要があることを実感したそうです。そうして、コトブキの遊具は公園に賑わいと子どもたちの笑顔をつくる1つの要素として、大きな役割を果たしているようです。公園利用者の視点に立ち、時代の流れに合わせるだけではなく、自分たちで積極的に流れを作っていく姿勢を伺えます。

今までもこれからも、使う人の目線で考える

2014年7月、コトブキに「株式会社コトラボ」(現在は株式会社パークフル)という新しい子会社が誕生し、メディア「PARKFUL」を立ち上げました。“公園といえば禁止事項だらけで行きにくい”といったネガティブな話題が多くなってきたことを感じ、今こそ公園のポテンシャルと魅力を発信するメディアが必要だという想いで、メディアを立ち上げたとのこと。とはいえ、日本全国に約11万超もある公園を自力で紹介してくのは至難の業です。そこで立ち返ったのは、コトブキが創業以来大切にしてきた「利用者目線」の考えでした。公園を最も利用する人、それは子どもと散歩をするお母さん。そんな考えにたどり着き、全国各地にいるお母さんに利用者の目線で公園を取材してもらうことから始めたそうです。

現在パークフルの代表を務める井上さんは、都市公園が一斉に設置された時代からだいぶ時間が経ち、当時と今現在の生活にギャップが生じていることからも、”利用者視点”の重要性が認識され始めているとも話します。そういった時代の流れを感じているからこそ、それを応用する形でアプリやWEBサイトなど様々なメディアを活用して、「多角的に公園を捉えて、可能性をどんどん拡げていきたい」と井上さんは意気込みます。そうして、今では全国の自治体や指定管理者から、自ら公園を紹介したいという嬉しい声が集まり、みんなで公園の魅力を発信し考えていくメディアとなっているようです。

みんなでつくる、これからのパブリックスペース

最後に、コトブキが見つめる公園の未来を聞いてみました。「公園で座ったベンチに電源があり、外で仕事ができるシーンがあるかもしれません。IOTと繋がったベンチは新しい公共空間の使い方を広げます。また一方では、いつもの公園が、災害時の避難場所になることもあります」と上地さんは話します。そんな事態に備えて“防災力はコミュニティ力”の言葉を掲げ、防災ファニチャーづくりにも取り組んでいるとのこと。「公園は本来、公共事業で作られる場所です。都市計画の予算があり、マスタープランが作られ様々な法令により形作られてきました。でも今の時代は、それをどうやってきめ細かに使っていくか、公園の近所に住む人は何を欲しているかを、みんなで考えていく時代だと思います」

PARKFULを通じ、様々な公園活用について提案を行う井上さんからは、こんなメッセージをいただきました。「まずは、パブリックスペースは自分達の場所という想いを持ってほしい。そのうえで、その場所をどう使っていくか、維持管理していくかを一緒に考えていきたいです」

<インタビューを終えて>
「利用者目線」を常に持って、将来のパブリックスペースの在り方についてお話をされていたコトブキのお二人。老舗企業としての家具・遊具制作に留まらず、そこから広がるワクワクする光景を目指して、ITの活用を含めた公園の様々な可能性を拡げていき、新しい公園の未来を柔軟に考えていく姿勢を垣間見ることが出来ました。(エリマネポータル編集部)

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