とうとう2020年東京オリンピックイヤーを迎えました。
渋谷のパルコやスクランブルスクエアなど、オリンピックに合わせて都内各地で行われてきた施設も2019年末に開業していますし、JR山手線高輪ゲートウェイ駅暫定開業などこの先も都市開発や施設開業の話題は尽きそうにありません。
テレビなどでご覧になった方も多いと思いますが、東京オリンピックのメイン会場となる国立競技場も2019年11月に竣工し、12月21日にはこけら落し公演が行われました。
今回は、実際に現地に足を運んで見えてきた新国立競技場の様子や、こけら落し公演の内容及び、そこから見えてきた今後の可能性についてレポートしていきます。
※公演中の撮影は禁止されていたものも多く、写真は限定されることをご了承ください。
街に “溶け込む” 競技場
まず目に飛び込んできたのは、天井に張られているルーバー状の木材です。外装材として木材が用いられていることにより、コンクリートや鉄とは異なる柔らかい印象を受けました。
使われた木材は日本全国から集められたそうです。
設計者の隈研吾さんは、周辺の環境となじむ「負ける建築」を掲げていらっしゃいます。
約6万人収容の競技場ですが、外部に対しても圧迫感はなく街に溶け込んでいる印象です。
下から眺めると、木材が使われたルーバーに照明が柔らかく反射し、温かみのある空間を演出しています。
競技場内部の座席はグリーンを基調としながら、5色がランダムに使われています。空席を目立たないようにする工夫にも見えますが、陸上トラックの赤茶色と相まって森の中を彷彿とさせます。
5階部分の外廊下は、オリンピック・パラリンピック終了後には一般開放される空中回廊になるようです。旧国立競技場を含め、スタジアム建築物は利用されていない時は閑散とした印象になりがちなのですが、高台の回廊が解放されることにより都心のお散歩スポットとして人気になるのではないでしょうか。
また、1階部分には所々にベンチが設けられ、草木も植えられているので、ちょっとした庭園のような雰囲気を醸し出しています。ジョギングやウォーキングをされる方にとっても、良い場所になるのではないでしょうか。
地元住民の方々によるパレードも
こけら落とし公演では、和太鼓によるオープニングアクトから始まり、東北の復興の願いを込めた「東北絆まつり」の特別演舞が行われました。
その後、日本サッカー界のレジェンドである三浦知良選手や、2019年ラグビーワールドカップで活躍した日本代表リーチ・マイケル選手らのスピーチがあり、スポーツ界を代表して国立競技場への想いが語られました。
そして、DREAMS COME TUREと嵐のコンサートで会場内の熱気は高まり、「ONE RACE」と名付けられた性別、人種、障碍を超えた一つのチームが一つのバトンをつなぐレースが行われました。
名だたる出演者によって公演は大いに盛り上がりを見せたことはもちろんですが、筆者にとって、こけら落しイベントで印象的だったのは、国立競技場の周辺自治会や商店街の方々がトラック内をパレードされていたことです。中には子どもたちも多くいました。
この地では今まで、オリンピックや世界陸上、Jリーグ開幕戦、高校サッカー、コンサートなど様々な試合やイベントが行われてきました。そして、それらを観るためにたくさんの人がこの街を訪れました。
しかし一方で、周辺に住んでいる方々にとっては日常生活への影響や、今回の工事によって環境が今までとは変わったことによる戸惑いも当然あると思います。ですが、パレードで手を降られている方々は皆さん笑顔だったことが、筆者にとってとても強く印象に残っています。
街のシンボルとして開き、引き継ぐ
今後、日常における国立競技場は街に開かれた広場のような場所になると予想します。街の子ども達にとっては、恰好の遊び場になるでしょう。
また、ハレの舞台としての国立競技場は多くの選手があこがれ、多くの人々が訪れる場所になります。パレードに参加された方々は、そんな舞台のあるわが街に誇りを持っているという笑顔だったのではないでしょうか。
まさに街のシンボル。旧国立競技場の時も同じような想いを持たれていたのだと思いますが、新しい国立競技場にもその想いは引き継がれています。そして子ども達にも引き継がれていきます。
国立競技場内に植えられた新しい木々は、これから成長していきます。それとともに街も、周りの人々も成長していくんだと思います。
2020年この新しい国立競技場でどんなドラマが生まれるか楽しみです。
そしてこの競技場と街がどんな風に育っていくのかも楽しみです。