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NY「ハイライン」から見る、歩行者フレンドリーなまちづくり

ニューヨーク「ハイライン」ができた理由とその効果

マンハッタンの南西部に、長年放置されてきた高架の旧貨物線の一部を活用した約3キロに渡る遊歩公園「ハイライン」があります。この旧貨物線は1934年から46年間市場と街を繋ぎニューヨークの食卓を守ってきましたが、自動車の発展が進むにつれ貨物の需要は減り市場と共に廃れました。ですが、沿線の住民だった2人の青年がこの産業都市廃棄物を残そうと立ち上がったのをきっかけに、今や年間で約500万人が訪れる世界的に有名な観光地になっています。

草木が生え、ベンチ(ベンチがあれば人は集まる!これについては次の記事に書き記したいと思います)が設置されたこのコミュニティスペースは周辺地域にまで影響が及び、かつて廃れ果てたチェルシー地域も活性を取り戻し、資産価値があがるなど都市再生の成功事例として取り上げられています。

産業都市廃棄物から有益なコミュニティエリアへ

ハイラインの始点はミートパッキングエリアというニューヨークで最も大きな市場の1つでした。利便性を高めるため、工場や倉庫のものがダイレクトに積めるように線が工場に直結し、その場で荷積みを行い運搬するという産業史を感じられるよう、公園になった今でもその部分を残しているのが1つの特徴です。

また、ハイラインにはたくさんの種類の植物が群生しています。元々生えていた植物をそのまま活かしている部分があったり、そこからインスパイアされて作られたデザインの植え込みがあるなど、植物もまた「この場所ならではの資源」としてを活かしながら新しい価値を生み出した空間は、まちの中に癒やしの空間を生み出しています。

そして最も特徴的である「ハイ(高架)」であること、貨物線跡を遊歩道としてベンチやサンベッドを配し、様々な特性を活かしたデザインが人々を集める要因になっていると言えます。ハイラインからは自由の女神やニューヨークの街が見渡すことができ、夕方以降はハドソンリバーに沈む夕日も見ることができるなど昼間と夜で違う景観を味わうことができます。また、至るところに施された様々な形態のベンチやサンベッドは人々に座りたいと思わせ、憩いの場として人を呼び込むスペースが随所に散りばめられています。

その他にも、ハイラインでは年間400以上のイベントが行われており、ガイドツアーや講演会、シーズンに沿ったイベントを開催するなど賑わい創出に余念がありません。このように、ある特性を活かしながらも新しい価値を生み出されたスペースと賑わい創出のための仕組みがあるハイラインは、地域の価値を高める「エリアマネジメント」のエッセンスをふんだんに取り入れていると言えるのではないでしょうか。

ニューヨークと日本の違い、これからの日本

実は日本にもハイラインより先んじてできた廃止貨物線の再利用例があります。それが神奈川県横浜市の「汽車道」です。こちらも 新港埠頭の物資輸送に使われた臨港鉄道の遺構を保存・利用したものになり、 桜木町駅と新港地区と最短距離で結ぶプロムナードとなっています。緑地も整備され多くの人に知られる散歩道となりましたが、座って休める空間の提供や、心地よい多様な緑あふれる空間、賑わいの場の創出においてはハイラインの方が勝っているのかもしれません。

日本でも公共的な空間をより活用していく流れが強まっています。地域の人だけではなく世界中の人に注目され、愛されるコミュニティスペースが日本にもたくさん出来ることを願うばかりです。

【参考】
https://tabi-labo.com/275762/ny-high-line
http://www.city.yokohama.lg.jp/kankyo/midoriup/jigyo/midori/chiikimidori2/images/mm21shinko/plan.mm21shinko.pdf
https://mainichi.jp/premier/business/articles/20180119/biz/00m/010/042000c

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