JR川崎駅に直結する「LAZONA(ラゾーナ)川崎プラザ」のシンボル、「ルーファ広場」はご存知でしょうか。2018年に人工芝設置により、人が集う広場へと変貌を遂げたこの広場を訪れてみました。ラゾーナ川崎プラザは2006年9月にオープンした、約330店舗有する大型商業施設です。改札を出てラゾーナへ向かうと一番最初に通るのがルーファ広場。リニューアル前は駅への広小路として近隣住民の生活動線になっていました。
施設所有者である三井不動産のwebサイトを見てみると、LAZONAという言葉に込められた思いがこのように記載されています。
「LAZONA」とは、「Lazo(スペイン語で縁、繋がり、絆、結合を表す語)」と「Zona(スペイン語で地域を表す語)」を組合せた造語です。街づくりのコンセプトである「人と人の関係のあり方の再生」、「人と自然の関係のあり方の再生」、「自然な自分に再生」の3つの「再生」に込めた、「人と人」、「人と自然」等の「縁・繋がり・絆」を「Lazo」で表現しています。さらに、1908年(明治41年)に電球の生産を開始し、100年近くにわたって人々のライフスタイルの発展に寄与する製品・技術を送り出してきたこの土地と社会との関係が、将来も変わらず繋がっていくとの意味合いも併せて表現しました。(三井不動産 WEBサイトより引用)
この言葉の背景には、ラゾーナのまちづくりのコンセプトとして、20世紀が「近代化・工業化が社会を支えてきた時代」であったことに対し、21世紀の時代姿として、下記3つに設定したそうです。
・「人と自然の調和をはかる時代」である
・「人と人」の関係、「自分と社会」の関係を回復していく時代である
・「ものの豊かさ」から「思い出づくり」の時代である
また、ルーファ広場を取り囲む建物も印象的で、「屋根のある街」という建築コンセプトのもと、外装・大屋根の設計はスペイン人建築家、リカルド・ボフィル氏(Ricardo Bofill Leví)が担当しました。 ボフィル氏はバルセロナ=エル・プラット空港などを手掛けた事でも有名です。
訪れた日曜日の午後は「ラグビーワールドカップ100日前イベント」や、ショッピングを楽しむ家族連れでテーマパークさながらの賑わいでした。一方平日夕方から夜にかけては学生やサラリーマンの姿が目立ちます。このような、平日・休日、昼夜問わずにぎわいはどのようにして生まれるのか、そのヒントを探ってきました。
居心地の良い滞留空間の仕掛け
①人工芝と本物の樹木
広場は360°建物に囲まれている“人工空間”でありながら自然が感じられる場になっています。中央部分は人工芝ですが、緑視率という意味では大部分が緑の空間であり、広場の周囲には14本の本物の樹木が植えられています。
②目線を低くするアフォーダンス
樹木の下には可動式のベンチが、大型スクリーンの下には階段状の座れるスペースがあります。どちらも子供が座っても足が届く高さになっており、人工芝に直接座るのときとさほど変わらない目線の高さになります。そのためか人の存在は感じつつも、歩行者と目線の高さがずれていて歩く人の圧迫感はさほど感じられませんでした。
③歩行者と寛ぎたい人のゾーニングわけ
ディテールを見てみましょう。人工芝と舗装面の段差はほとんどなく、上から俯瞰して広場を見てみると、駅に向かって人の流れができており、人々が滞留するエリアと移動動線が自然に分かれています。
ステージとしての広場
ここまでは人々が集う場所としての広場について記しましたが、ルーファ広場のもう一つの顔である「ステージ」に着目してみます。
広場正面のステージは照明や音響施設を備えた本格的な造りになっており、ライブやトークイベント等に活用されています。基本的には立ち見になるのですが、ステージ前の人々は人工芝に直接座って鑑賞することができるようです。
また、ルーファ広場をぐるりと取り囲む通路は立ち見席として、また通路に等間隔に設置されたベンチは観覧席として機能しています。平常時のベンチはちょっとした休憩場所として機能していました。ショッピングのついでにふと立ち止まって広場を見下ろすことができることも、不特定多数の人がイベントの参加者になるきっかけになります。
地域に根ざす商業施設としての広場のあり方
このように様々な人々が集う広場として、商業施設でありながらショッピングだけでなく、イベント等や家族のお出かけ先として多様な目的をもつ、公園のような広として、ルーファ広場はまちの中心的存在になっているようです。まさにLAZONAに込められたコンセプトを体現するような、”人と人、人と自然の繋がり”を感じることのできる空間なのではないでしょうか。