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まちなかを居心地のよい日常空間へ!Living Street Hitachiから見えてきた日常づくりの手応え

先日、エリマネこの記事でもお伝えしたLiving Street Hitachiの開催レポートをお伝えします。
まん延防止等重点措置によって中止や延期が繰り返されましたが、ようやく「日常を居場所にする活動」は陽の目を浴びて4/2(土)、4/3(日)の両日に開催されました。

このイベントの根幹となるLiving Street Projectには、「このまちに来ることを日常の一部にしたい」という合言葉があります。

特別なことがなくても、ふらっと立ち寄れて、買い物や音楽を楽しみ、みちで遊んだり、人やモノと出会ったり、ただそこに座って話したり。
商店街のストリートに多様なコミュニケーションツールを仕掛けることで、子どもから大人までそれぞれが思い思いに過ごせる空間を生み出す。

こういった基本理念に加え、地域資源を組み合わせて実現したのが、Living Street Hitachiです。
今回はイベントレポートに加えて、主催のLiving Street Hitachi実行委員会(以下、LSH実行委員会)の統括増田さん、および広報新妻さんへのインタビューも行いましたので、併せてご覧ください。

Living Street Hitachiの趣旨、狙いについて

舞台となる茨城県日立市は、茨城県北エリアに位置する地方都市で、名前の通り日立製作所の発祥地であり、企業の成長とともに発展してきたいわゆる企業城下町です。都心から特急で1時間半ほどで到着できるところにあります。
日立市は、日立製作所の業態変化だけでなく、全国例に漏れず、人口流出や高齢化などの社会課題を抱えています。そんな中で30年間日立市民の衣食住の中心を支え続けてきたイトーヨーカドーが撤退しました。
撤退したイトーヨーカドー前にある商店街(パティオモール)が急にガランとしてしまったため、かつての賑わいを取り戻そうとした日立市役所がLSH実行委員会/まちのこ団代表の増田さんに相談したことが、今回イベントが開催された経緯になります。

今回取材をした「Living Street Hitachi」はグランドレベル(1階)の商店街にて開催されましたが、それと併せる形で「こどものまち・ひたち」というイベントも元イトーヨーカドーのビル4階のスペースで開催されていました。
「こどものまち・ひたち」は、大人の立ち入りを禁止した屋内スペースの中にミニひたちのまちをつくり、まちの行政や銀行、警察、お店などをすべて子どもだけで運営し、自治をするこどもだけのまちを2日間に渡って行われていました。
子どもを対象とした「こどものまち・ひたち」に対し、今回のLiving Street Hitachiはファミリー層にターゲットを置いたイベントになっています。

増田さんによると、こうした2つのイベントを同日開催した狙いがあると答えていただきました。

「ファミリーをターゲットとしたイベントの多くは、実際のところファミリーというより、購買目的の大人を意識的に対象しているケースが多いため、子どもの居場所がないと感じました。それを今回2つの企画をまとめたことで、特定のターゲット”だけ”が楽しめるのではなく、子どもから大人まで、みんなが過ごせる「まち」としての日常(長期滞在化)のデザインを試みることができたと思います」

(今回のイベントを企画したLSH実行委員会の統括増田さん)

普段の生活に寄り添っていた空間が、より居心地のよい空間に。

イベント会場となるパティオモール(商店街)は日立市の市道であり、日立銀座商店街を突き抜け、日立市役所まで伸びる気持ちのいい歩行空間です。かつては人が行き交うコミュニティ道路として整備されていたものの、うまく活用できていない課題がありました。
今回のイベントではこの空間に人工芝を引き、テーブルやベンチを設置します。加えてコタツやハンモック、ボードゲームや遊び場が広げてくれます。この場をさらに盛り上げてくれるのは商店街の皆さん、茨城・日立を拠点とするお店の方々、パフォーマーです。また、この日のために、日立市周辺からボランティアメンバーも集まります。
キッチンカーで購入したものをベンチに座って食べたり、ハンモックでゆらゆら揺れたり。普段は道路ですが、この日はのんびり過ごしてみる、そんなコンセプトに共感した方々が思い思いに時間を過ごしていました。

全部でストリート、リビング、ステージと3つのエリアが分かれていて、飛び込みステージゾーンもあり、ダンスやライブ、パフォーマンスなど、自由に歌ったり踊ったりできるステージもありました。キッパリと境界線を作り込みすぎないというところも仕掛けの一つだそうです。

道を単なる道として使わない、日常空間への可能性

まちの日常空間が居心地のよい場所になっている、そんな光景に可能性を感じている。増田さんはこう語ります。

「このパティオモールを初めて見たとき、“コミュニティ道路”として利用できる要素がまだまだ残っていると思いました。他の道路と違い、人のために創られた道であるからこそ、例えば、ベンチに座って談笑する。ハンモックに揺られて空を見上げる。芝生に寝転がって風を感じてみる。コタツに入りながら路上パフォーマンスを楽しむなど。そんな光景を見たくて企画を始め、実行してみると、本当にその光景を見ることができました。それだけでも今後の可能性があると思います」

続けて、今回実施したイベントの手応えを教えていただきました。

「コロナ禍ということもあり、家に篭っているばかりの毎日だったからこそ、外に出て居心地の良い空間をつくるというコンセプトに共感されたのかもしれないですね。滞在時間が予想より長く、こういった機会は求められていると感じました。」

また、今回の広報を担当していた、新妻さんはこう話します。

「居心地をつくるというコンセプトが利用者に自然と受け入れられたと感じています。また、初回のイベントだったにも関わらず、多くのメディアに取材していただきました。これは、“つながりの創出”や“日常の再定義”などが地域から求められている、ということではないでしょうか。
こうした成功体験を積み上げながら、今後も小さい仕掛けを広げて、チャレンジとその応援にあふれる日立市を目指したいです。」

(広報の新妻さん)

苦労した部分、イベントが成功したヒントはどこにあったのでしょうか。

増田さん

「コンセプトを貫き通すことや共感・理解してもらうことに、とにかく苦労しました。日立市でも大規模イベントはありますが、来場者数や売上を目的とした商業/販促イベントがほとんどです。こうした中で、滞在人数を指標とした今回の取り組みは日立市としては初めて。そのため、市役所、出店者、関係者に対して、共通のイメージを持ってもらうことや、他のイベントとの違いを理解してもらうことが大変でした。

逆に言えば、コンセプトを突き通したことで、このイベントは成功したといえます。いわゆる晴れの日としてのイベントらしくないイベントというものに共感した人々が集まったことで、当日のボランティアメンバーで運営を賄えたりと、コンセプトの力と場所のポテンシャルを感じています」

(Living Street Hitachi実行委員会、出店者、パフォーマー、ボランティアメンバーによる集合写真)

今後の展望を教えてください。

増田さん

「一番は地域資源の活用。商店街や周辺のお店、住んでいる方などが、その日は外に出て、販売や遊びに立ち寄る。その場所だからできるリビングストリートのデザインを仕掛けていきたいです。

イベント的に一過性の盛り上がりを作るのではなく、参加するハードルを低く、誰でも始められる仕組みを構築して、この地域と似たような課題を抱えている多くの場所でも実施して、まちを居場所に変えていきたいと考えています」

新妻さん

「“出店者・出演者⇔お客さん“と言うような関係ではなく、地域プレイヤー、共感者、パフォーマーが緩く交わり、関わり合い、繋がりを生み出すような日常を作りたいと思います。そうすることで、シンプルに“この地域に住んでいてよかったな”と安心できるし、チャレンジしようとしている人であれば背中を押してもらえると思うんです。

日常の延長線上に生まれる“縁”や“絆”を感じ、日立で暮らすことへの確かな自信が醸成される。シビックプライドを持つ “地域人” を生み出す仕掛けをしていきたいです

最後に、この記事を見ている方に向けて

増田さん

「Living Street Projectはどこでも、誰にでも、創り出せることを前提に構想しました。今後日立市に限らず、他の地域でも同様に「このまちに来ることを日常の一部にしたい」を合言葉とした活動を広げていきたいです。

これからも日常の明日の歩み方をデザインし(続け)、理念を浸透させ、誰かに持ち帰ってもらうことで、まちの日常が育って欲しいと思っています。わたしたちは、そんなあたたかいまちづくりをしていきたいと思います」

(Living Street Hitachi実行委員会コアメンバー)※左から、大越さん、増田さん、新妻さん
写真提供:LSH実行委員会

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