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BIDはORGWARE!アメリカのBIDについて現場の生の声を聞いてみた<<スペシャルインタビュー>>

エリアマネジメントという手法を利用して「まちづくり」を行う企業や団体が増加しつつある昨今、プレイスメイキングという言葉も徐々に日本に浸透しつつあります。 そこで今回は、自らを「プレイスメイカー」と名乗り、6年間ダウンタウンサンタ・アナBIDに所属し活動をされているライアン・スモラーさんを当メディアを運営している株式会社クオルの事務所にお招きし、アメリカのBID事情や実際の活動内容など現場の生の声をお伺いしました!

満面の笑みで写るライアン・スモラーさん(左)とクオル代表の栗原(右)

Ryan Smolar(ライアン・スモラー)
プレイスメイカー, Downtown Inc., カリフォルニア州サンタ・アナ 地方自治体やビジネス地区組合、観光局、学校、アート/フード関係の非営利組織にコンサルティングを手がけ、革新的な提案を行う。それを通じて、地域の経済再建やネットワーク構築、コミュニティの変革を支援してきた。 Downtown Inc.では、ダウンタウンサンタ・アナBIDのイベントプログラムや公民連携、経済開発、戦略策定、マネジメント、組織運営、コミュニティ連携などを主導。数多くのイベントやプログラム、マーケティングキャンペーン、テクノロジーイニシアチブの立ち上げ・運営に携わる。

そもそもBIDとは?

 2018年に日本でも関連制度が創設された、まちづくりや地域活性化の手法の1つでもあるBIDはBusiness Improvement District(以下「BID」)の略で、日本語では「事業改善地区」と訳します。BIDは一体いつから誕生したのでしょう?
 スモラーさん曰く、BIDの歴史はアメリカの都市の歴史でもあると話します。第二次世界大戦後、ゼネラル・モーターズを中心とした車社会の推進を背景に北米では郊外化に進展する一方、中心市街地の衰退が進行しました。郊外化したエリアでは自動車による来店を前提とした大型ショッピングモールが出現し、中心市街地の小売店が立ち並ぶ商店街エリアは次第に廃れていきました。それを危惧した行政が中心市街地を中心にした大規模な再開発計画も実施されましたが、その効果は限定的で、「失業者やホームレスが多数発生し、スラム化してしまったエリアにはまだ貧困や差別が根強く残っているのが北アメリカの現状でもあります。」と続けたスモラーさん。
 こうした問題に直面し、1970年にカナダはトロントにてBIDが誕生。そして現在はアメリカだけでなく、イギリス、ドイツ、アフリカにまで広がりつつあります。官民協働で活動することによって公共空間のデザインも可能にするBIDは、市民が能動的に活動できる範囲が広まることで、より機能的なまちづくりが勧められそうですね。 では、BIDはどのようにして設立できるのでしょうか?

日本版BIDについてはこちらから!

BIDの設立方法と活動内容

 BID制度は特定の地区内の地権者(あるいは事業者)に対して、行政が税金に上乗せしてもれなく負担金を徴収し、それにより対象地域の活性化などを目的とした活動をおこなう団体の活動資金を確保する制度です。
 設立する方法は区域内の住民に限らず、ビジネス事業者、土地や不動産所有者、地方自治体などからも提案することができます。提案者はBID区域や事業計画、収支計画表などを盛り込んだ提案書を作成し、指定区域内の受益者全員にBID設立について提案をした後、受益者による投票で50%〜100%の賛成を得ることができればBIDを設立することができます。 活動内容は主に環境改善や交通・治安改善、清掃活動、そしてイベントやマーケティング、プロモーションなどを行う地域経済振興活動が挙げられます。

 アメリカでは1000以上のBIDが存在しますが、スモラーさんが現在所属しているサンタ・アナのBID組織は彼が所属する以前は「うまくいっていないBIDの数少ない事例の1つに入ります。」とスモラーさんは話します。
スモラーさんが所属する以前のサンタ・アナBID組織は2つに分断されており、活動の方向性も分断されていたそうです。
そこでスモラーさんは、組織に出向くだけでなく、組織外の人達とのコミュニケーションもとることに注力されたそうです。SNS上で密にコミュニケーションを取ったり、清掃や治安パトロール等の活動も積極的に行ったりして、人々からの信頼を得ることに努めました。そのようにして、エリア全体の士気を高めることを意識して活動を行なっていると仰っていました。
そして、コミュニケーションをとる中で、点と点を繋げるように人々や地域の学校、エリア内で活動するアーティストとコラボしたイベントなどを過去3年間で約75件実施したのだそう。
らには、風通しの良い組織を目指すにあたって、人々が気軽に参加できるようなオープンなミーティングなども実施し、常に人と人の繋がりを意識して活動されていることがお話の中から伺うことができました。 「まだサンタ・アナのBIDは2つに分断されているけど、いずれは「結婚したよ!」(=仲良くなったよ!)と言えるまでの仲になるのが当分の目標です。」と冗談まじりにお話しされていました。

サンタ・アナBID組織編成

サンタ・アナBIDは現在以下の組織編成で活動を行なっているそうです。

・エグゼクティブ・ディレクター:2名体制
・オペレーション・ディレクター
・情報発信ディレクター
・外注のイベントプロデューサー
・ライター
・スチールカメラマン
・ムービーカメラマン

イベントを開催する時はあえて外部のイベントプロデューサーを招いているそう。 外部の人間が入ることによってまた新しい化学反応が起こることを期待されているとか!

効果検証は「第三者からの評価」

 BIDを運営する中で効果検証をどのようにしているのか?という質問に「現段階では、意思決定者が気持ちよく感じるような運営・活動がなされている状況を示せるように心がけています。たとえば、もしクライアントが地域のイメージを気にしているのであれば、SNSなどを積極的に発信して第三者から「サンタ・アナいいね!」と他人から評価されていることも指標のひとつです。ポジティブな評価を客観的に示せれば、内部のモチベーションにつながり、より活発に活動が行われると思います。」とスモラーさん。
 今回スモラーさんのお話を伺いながら「人がまちをつくる」ことを意識し、人ファーストで活動・運営をされていることがひしひしと伝わってきました。
 「BIDはORGWARE(=ハードとソフトと並んで重要な、物事を動かす「仕組み」)です」と開口一番に仰っていた意味がよく理解できたとても有意義な時間となりました。
Thank you so much for bringing us great inspirations!

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