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《第1弾》エリアマネジメントという手法を深く知る意義、エリアマネジメントが地域にもたらすもの、とは。(2021年エリマネスクール第6期受講生インタビュー)

例えば新たな都市開発入札における必須の整備条件として、また希薄となっていた住民間交流の再活性化やマンション開発における新旧住民の円滑なコミュニケーション醸成の礎として、或いは幾多のプレイヤーが林立する都市部における課題を解決し、効果的な協働を模索・確立していく手段として、今やその導入や確立、体制整備が欠かせないものとなってきている「エリアマネジメント」。

とは言え、これからエリアマネジメントを導入・確立しようとされているフェーズにあっては、エリアマネジメントという手法を知ることの意義やエリアマネジメントが実際にもたらす効果などについて今一つ分からない、という感想をお持ちの方々も少なくないのではないでしょうか。今回、その「エリアマネジメント」に足元から取組み、その導入、活用を通じてまちづくりを実際に推進している「広島駅周辺まちづくり協議会」の吉田様、野澤様(以下、敬称略)に対象地域の課題や取組みとエリアマネジメントの関わりについてお聞きしました。

はじめに、広島駅周辺まちづくり協議会の概要、設立の経緯等をお教え下さい。

(吉田)広島駅周辺地区まちづくり協議会(以下、駅まち協議会)は、都市再生によるハード整備が急速に進む広島駅周辺地区が持続的に発展していくため、地域が主体となったまちづくりに取り組むことを目的に、2018年5月に設立されました。
「ワクワクドキドキ変わるエキマチHIROSHIMA」をキャッチフレーズに、エリア内の企業・団体により、地区の回遊性を高める新たな魅力づくりや、安心・安全に過ごすことのできる環境づくりに取り組みを進めています。

イルミネーション事業「エキマチイルミ」
駅壁面メッセージボード掲出

様々な企業・団体が林立する「広島駅周辺」という地域において、エリアトータルでの魅力や、安心安全な環境づくり、をテーマに設立された、ということですね。ではもう少し具体的に、駅まち協議会、或いは所掌のエリアには、どのような解決すべき、或いは新たに取り組んだり、補強したりしていくべき課題があるのでしょうか?

(吉田)大規模な都市再生事業によりさまざまな都市機能の集積が進み、ハード面では新しいまちに生まれ変わりつつありますが、エリアの価値を維持していくためには、ソフト面でのまちづくり、つまり、生まれ変わったハードをどう使っていくか、についての取組みや工夫が不可欠です。
特に、これまで広島駅周辺エリアは通過点としての役割が強かったことから、単なる通過点ではなく、目的をもって訪れる方が増え、エリア内で時間を過ごしてもらえるような魅力づくりが必要と考えています。

水辺空間活用事業「みんなのMARKET」で賑わいをみせる水辺空間①
水辺空間活用事業「みんなのMARKET」で賑わいをみせる水辺空間②
水辺空間活用事業「みんなのMARKET」で賑わいをみせる水辺空間③

単にハードの整備だけではダメで、ソフト面でのまちづくり強化が備わって初めて、滞留を促す魅力的なまちが創出、或いは維持出来る、というわけですね。
ところで、近年、そのような課題を効果的に解決したり、理想像を実現していく上で「エリアマネジメント」という手法が大変注目されていますが、具体的にどのようなところでエリアマネジメントという手法が効力を発揮するとお考えでしょうか?

(吉田)エリア全体の価値を高めていくためには、各主体がそれぞれの敷地内で考えるのではなく、連携したり、エリア内の公的空間を使ったりしながら、同じ方向を見てまちづくりを考える必要があります。さまざまな業種の企業が立地するこのエリアでは、これまで企業同士の横の連携を図るような場がなく、エリアマネジメントを通じてエリア内のネットワークが形成されることで、エリアに関わるさまざまな主体が、一緒にまちのことを考える機会を生むことができると考えています。

「各主体が同じ方向を見て…」、というのは印象的ですね。つまり「地域の様々な資源」を軸に、「地域の一体感創出」をもたらすのがエリアマネジメントの手法であり、究極の目的でもある、と言えそうですね。ところで、お二人はそれぞれ、普段どのような業務をご担当をされていらっしゃるのでしょうか?

(吉田)日頃はシンクタンクの研究員として、地域づくりや観光などの分野の調査や計画づくりについて、主に自治体からの受託業務に携わっています。その一方で、より実践的なまちづくりの支援にも取り組んでおり、そのひとつとして、駅まち協議会の設立準備から設立後の事務局運営までお手伝いをさせて頂いています。

なるほど、調査研究視点での業務と実践的なフィールドでの業務、その双方からまちづくりに取り組んでいらっしゃるのですね。そんな、まちづくりのプロフェッショナルともいえるお二人ですが、昨年、クオルのエリマネスクールを受講されていらっしゃいます。それをきっかけとしてエリマネこ編集部の面々とも同じまちづくりに携わる者同士、言わば“まちづくり仲間”になった訳ですが、このスクールの受講を決めた経緯やきっかけ、決め手となったことなどがあれば教えてください。

(吉田)既に駅まち協議会の事務局運営に関わっており、他のエリマネ団体の視察などを通じてある程度の知識はありましたが、体系的にエリマネを学んだことがなく、駅まち協議会の中でエリマネの意義や目的を説明する上でも、裏付けとなる知見が必要と考えていたことから、受講させていただきました。

(野澤)昨年の4月に駅まち協議会事務局の仲間に加わったのですが、エリアマネジメントの「いろは」を学んだ方がよいという上長(吉田)からのススメで受講する運びとなりました。座学による「インプット」だけでなく、課題作成のプロセスで、学んだことを活かして自分の住んでいる地域を舞台に計画づくりが出来る、つまり「実践」を学ぶことができるという点に魅力を感じました。

確かに、エリアマネジメントという概念はまだ比較的新しい概念ですので、体系的に学ばれる、或いは実際に計画を作ってみる、といった機会はなかなか得られないのかも知れません。
では、実際にエリマネを体系的に学ばれたことが、それぞれのご担当の業務、或いは活動や取組みの中でどのように活かされていますでしょうか? また、学ばれたことで特に役立っているノウハウなどはありますか?

(吉田)駅まち協議会としては、設立から数年が経過し、徐々に活動の目的に対する意識が薄れつつあるところでしたので、改めてエリマネの目的を伝えていく上で、エリマネスクールで学んだ知識が役に立っています。十分に伝えきれないので、無理を言ってエリマネスクールの校長でもある栗原さんに出張スクールをお願いしてしまいましたが…。

(野澤)どのようなエリアになってほしいのか、という理想を描くこと、活動を行う目的は何か、という基本的かつ最も重要なことを教示頂けたことが一番の学びだと思っています。頭ではわかっていても、意識しないとなかなか行動につながらないものですよね。 駅まち協議会では、エリアのにぎわいづくりを担っていますが、このエリアでどのようなにぎわいを生み出したいのか、そして、少しでもその理想形に近づくためにどのような企画が必要になるのかを仲間と考えながら、日々活動しています。

デジタルスタンプラリー「エキマチウォーク」
毎月1回実施「おもてなし一斉清掃」①
毎月1回実施「おもてなし一斉清掃」②

(野沢)また、エリマネスクールで自身の住む団地の与件整理(歴史、現状、資源等の把握)をする中で、地域の方々とリアルにつながることができました。私が住む団地は昭和初期に開発された、後期高齢者が非常に多い団地ですが、近ごろ団地の新陳代謝が始まっていて、私もその一家族です。プランニングを行う中で、世代間の接点の欠如が課題だと感じ、何らかの仕掛けをつくることができれば、交流が盛んな魅力的な団地=理想像、になるのではないかと思い、その理想実現に向けたエリマネ計画を作成しました。スクールで作成した計画をもとに、現在はこぢんまりと交流の実践、例えば軒先カフェを立ち上げたり、公民館の駐車場を活用したファーマーズマーケットを計画したりしております。こうした活動ができているのも、エリマネスクールで学べたおかげです。

エリアマネジメントは、単に学ぶための概念ではなく、エリアの理想像を実現していくための極めて実践的な方法論として活きていく、ということがお二人のお話からよく分かりました。
最後に、今年も10月下旬より2か月間、エリマネスクールが開講されますが、お二人それぞれより、受講をご検討の方々へのメッセージをお願い致します。

(吉田)以前に比べエリマネという言葉が一般的になっていますが、取り組み自体がオーダーメイドなところがあり、体系的・総括的に学ぶ機会は少なく、エリマネスクールはその貴重な機会となると思います。また、自ら企画づくりを行う実践的な講義はなかなかハードですが、エリマネに限らず、企画力や思考力を養う良い機会になると思います!

(野澤)お仕事されながら受講される方が多いと思います。現業が大変な中、エリマネスクールにはなかなかヘビーな課題があります。正直、かなり負担になるとは思いますが、共に受講する同期のみなさんと一緒に、そう一緒にというところが重要なんですが(笑)、「ALL OUT」できれば、行動力の強化、プランニング術のノウハウ、そしてまちづくりに関わる方々とのネットワークの獲得等々、想像以上の見返りを享受することができます。受講後、アルムナイネットワークでお待ちしております♡

「広島駅周辺の未来を描く」小学生海外コンテスト作品展示
道路活用社会実験「エキマチテイクアウト」

今や、我々にとっても大切な「まちづくり仲間」のお二人に話が聴けてよかったです。本日は有難う御座いました。

※現在、クオル(エリマネこ運営会社)では、お二人が昨年受講されたエリマネスクール「プランナー基礎講座」(第7期)(開講期間:10/22~12/10)の受講生を募集中です。エリマネの初心者は勿論、ある程度実務をされている方のノウハウの整理やブラッシュアップにも幅広く役立つ講座となっており、毎年まちづくりに関わる幅広い業界の方々が受講されています。 是非、この機会に受講をご検討下さい。

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