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渋谷のエリアイメージを一新する「MIYASHITA PARK(ミヤシタパーク)」—事業の仕組みとこだわりに迫る

ついに!
しばらくの延期期間を挟んで、渋谷の新たなランドマークとなるMIYASHITA PARK(ミヤシタパーク)が2020年7月28日から段階的に開業し、8月4日にグランドオープンを迎えました。
公園と商業施設が混じり合った他に類を見ない開発がいかに実現されたのか、そしてまちのシンボル空間としてどのような工夫があるのか、注目ポイントを読み解いてみます。

様々な顔をもつ複合施設

「これって公園⁉」…MIYASHITA PARK付近を歩いていると、そんな驚きの声がちらほらと耳に入ってきます。
アルファベット表記のMIYASHITA PARKは開発街区全体のエリアネームで、その構成を見てみると渋谷区立宮下公園のほか、三井ショッピングパークの公園一体型シリーズRAYARD、ホテルsequenceからなっており、施設内には区有の駐車場も整備されています。
異なる施設が緑をはわせたアーチ状の天蓋(キャノピー)で包まれ、MIYASHITA PARKとして一体となった、アイコニックな外観になっています。

MIYASHITA PARKのフロア構成

上下を区の施設に挟まれたユニークな造りですが、明治通りに立って眺めると目を引くのが、3層の商業施設を飾るきらびやかなブランドストア。
かたや渋谷駅方面の路地を歩くと、「渋谷横丁」がまったく異なる雰囲気を醸し出しています。
明治通り側はファッショナブルな原宿方面、渋谷駅側は昔ながらの面影残るのんべい横丁へと、それぞれ既存のまちとのつながりを感じさせます。

これは、路面店(アウトモール)を配置し、渋谷らしい多様性を感じさせるテナントミックスを行うといった仕掛けによるものです。
PARKであると同時に、歩いて楽しめる「ストリート」らしさをつくることも目指されていることが伝わってきます。

明治通り沿いのブランドショップ 屋上の公園はデッキでつながれています
夜の横丁 ブランドショップと同じ並びとは思えません

パワーアップした公園施設

もちろん、屋上に広がる公園自体も特筆すべき空間になっています。
渋谷区で初めて適用された「立体都市公園制度」によって、このような配置が可能となっています。これは文字通り、都市公園の区域を地上に限らず立体的に定め、他の施設と一体的に整備することで、効率的な空間活用を目指す制度です。

かつて道路で南北に分かれていた空間がデッキでつながることで10,800㎡に広がり(従来から300㎡拡大)、約1,000㎡の芝生ひろば、スターバックス、ボルダリングウォール、スケート場、多目的運動施設(サンドコート)、インフォメーションや利用受付のためのパークセンターが配置されています。
目立たないところでは、芝生ひろば奥の搬出入用の大型リフト、イベント電源盤と、イベント活用を想定した設備もしっかり準備されています。

ボルダリングウォールと奥に見えるスケート場
公園内のスターバックス 奥にそびえるのはホテルsequence

気持ちよさを演出する空間デザイン

このように魅力的なコンテンツが複数ありますが、アクティビティに参加しなくても公園にいるだけで気持ちよさを感じられるような、ディテールのこだわりも見逃せません。

ランドスケープをデザインしたアースケイプ社によるオリジナルのファニチャーが、風景になじみながら多数配置されています。その他にも、線路や地上、渋谷のスカイラインを眺められるカウンター席、そして芝生につけられたちょっとした傾斜など、様々な姿勢や人数で滞留できる場所が設えられています。
実際、暑さが厳しい季節でも、日が沈んで涼しい時間になれば、多くの人が適当な距離感をとりながらくつろいでいて、とても渋谷の真ん中とは思えないような光景がすでに生まれていました。

金網状のベンチのほか、止まり木やゆるやかに傾斜した芝生など、座りやすい場所が隅々にデザインされています
日が沈むと、思い思いにたたずむ人でにぎわう

公園部だけでなく、商業施設3階の外に面した通路や地上部にも、腰を下ろせる場所が数多く散りばめられています。
延長330mにわたる施設を上下に回遊して楽しむには、いたるところにデザインされた座れる場所は不可欠なエッセンスです。
また、街区全体にわたって、統一されたポップなサインが配置されていることも、MIYASHITA PARKとしての一体感を感じながら回遊できる環境をつくっています。

3階商業フロアから通りを見下ろせる席
公園部分、商業部分で統一されたサイン

貴重な緑のオープンスペース

「100年に一度」と形容される開発が続き、続々と新しい高層ビルが立ち上がる渋谷駅周辺。
MIYASHITA PARKもその流れの中にある一大事業ですが、地上3階という低層で緑にあふれた空間というのは、この立地において特徴的であり、貴重です。
渋谷区の様々な計画で、みどりの拠点とネットワークの重要性がうたわれており、平成28年の「みどりの整備方針」では宮下公園は次のように位置づけられています。

宮下公園を広域からの利用が見込まれる「広域利用公園」として位置づけ、環境面や防災面、にぎわい創出の面において重要な都市公園として整備計画を推進していく。

https://www.city.shibuya.tokyo.jp/assets/detail/files/news_oshirase_pdf_20161006miyashita_setsumei2.pdf

大まかに捉えると、ゆとりとにぎわいの両立を目指すという戦略に基づいて生まれたのが、新たなMIYASHITA PARKの空間ということです。

手前の原宿側から奥の渋谷駅へとつながる緑の軸線

公民連携による事業スキーム

いかにして区の施設と民間施設が一体的に整備され、どのように運用されているのか、整理してみましょう。

全体としてPPP(Public Private Partnership:公民連携)事業として行われる中で、「公募型プロポーザル方式」によって三井不動産が事業者に選ばれました(2015年2月)。
つまり、区が示した事業の趣旨・目的および条件に沿って、資金やノウハウを持つ民間事業者から提案を募り、すぐれた提案者を選定したのです。

そして、渋谷区は「事業用定期借地権」を設定します(2017年6月)。
これによって設定された30年という期間、事業者は所定の金額を払って土地を借り、そこで建設と事業を行います。加えて、整備された公園と駐車場を区の所有とすることと引き換えに、相当する施設建設費用が前払い賃料とみなされます。
これは、区としては財政負担をかけずに、公園と駐車場を新しくすることができたことを意味します。

できあがった公園の所有は区ですが、指定管理制度によって「宮下公園パートナーズ」によって管理されています。
これは三井不動産が代表の共同企業体であり、公園の管理運営も開発全体と連携しながら行える体制となっています。現状なかなか実施しにくい状況ですが、イベントの企画や誘致も担うようです。

ディテールと事業のデザインが結実した、新時代の“PARK”

公園でもありきたりな商業施設でもない“PARK”という新たな都市空間。
かつては近づきにくいイメージすらあったことが信じられないほど、新しい人の流れを生んでいます。
これまで類を見ない開発に対しての反応も様々ですが、MIYASHITA PARKは周辺の渋谷のまちに影響をおよぼすだけでなく、これからの都市づくりで参照されるケースとなりそうです。

そのようなプロジェクトの裏には、細部にわたる空間デザインと事業スキームのデザインの工夫がありました。
訪問の際は、そのような視点から歩き回ってみてはどうでしょうか。

MIYASHITA PARK

東京都渋谷区神宮前6-20-10
https://www.miyashita-park.tokyo/
渋谷区立宮下公園  https://www.seibu-la.co.jp/park/miyashita-park/
RAYARD MIYASHITA PARK   https://mitsui-shopping-park.com/urban/miyashita/
sequence MIYASHITA PARK  https://www.sequencehotels.com/miyashita-park/

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