今回よりメディア連携として、まちづくり系WEBメディアの記事を相互交換していくことを始めました!まずは、「パブリックスペースに特化したメディアプラットフォーム」のソトノバさんの記事連携をお届けします!さて、水辺といえば、エリマネポータルを運営しているクオルでも豊洲水彩シネマの企画・運営を行ったり、新豊洲に関するトークイベントを開催するなど、水辺から生まれる賑わいづくりのイベントが増えてきています。水辺の賑わいとして最も盛んなのは「水都大阪」ですが、都心でも日の出町のHI-NODEなど注目施設も増えて今後の水辺活用が楽しみです。
最近は日本でも大雨による水害や洪水などの件もあり、防災との活用が表裏一体ではあります。ただ、防災に力を入れすぎてもまちとしての景観が損なわれたり、遊びの空間も少なくなってしまう事例も国内で見受けられます。海外の事例として、ニューヨークでは市民が積極的に水辺を楽しんでいるということもあり、行政も市民の期待に応えようと水辺空間に力を入れているんだそう。今回ソトノバの記事ではニューヨークの水辺空間の紹介記事を転載させていただきます。
ーーーー以下、ソトノバより転載
前回記事(ニューヨーク・絶対に行くべきパブリックスペース!10選!ーマンハッタン編ー)ではニューヨークの訪れるべきパブリックスペースをご紹介しましたが、今回は、水辺に的を絞ってご紹介したいと思います。米コロンビア大学で都市計画を専攻する筆者の独断で、5カ所の水辺空間を選定しました。いずれも異なった魅力にあふれる素敵な空間です。
- 1. ハンターズポイントサウスパーク(Hunter’s Point South Park)
- 2. ブルックリンブリッジパーク(Brooklyn Bridge Park)
- 3. リバーサイドパーク(Riverside Park)
- 4. ピア17 サウス・ストリート・シーポート(Pier 17: South Street Seaport)
- 5. ドミノパーク(Domino Park)
- 洪水対策は日米共通の課題
1. ハンターズポイントサウスパーク(Hunter’s Point South Park)
住所:Center Blvd, Long Island City, NY 11101
2012年に第1期、2018年の夏に2期が完成しオープンしたこちらの公園。ニューヨークのクイーンズ、ロングアイランドシティ(住民の反対により撤退を余儀なくされましたがAmazonの第2本社建設案が浮上していた地域であり、ニューヨークの中でも変化の著しい地域の1つ)に位置します。ニューヨーク市公園局の職員も一推しの公園です。
廃れた工業跡地であったこのエリアは、周辺の住宅開発に伴って公園として開発されました。カフェ、プレイグラウンド、ドッグパーク、アウトドアジム設備などを備えた、11エーカーにおよぶ公園へと変貌を遂げ、地元住民に愛されています。この公園は設備が充実、デザインも変化に富んで魅力的ですが、そのような公園は他にもたくさんあります。この公園が他の公園よりも優れている点は、デザイン計画に減災の視点を盛り込んでいる点にあると言えるでしょう。
2012年の第1期の完成間近にハリケーン・サンディが襲来、4フィートに及ぶ高潮により、辺り一帯が浸水しました。しかし水は自然と川へ流れていき、公園は無傷のままでした。第2期についても、同様な災害を想定し対策したデザインとしています。コンクリート塀で川からの水の流入などを防ぐのではなく、川と共存する計画です。1日に2回、高潮の際には公園は湿地帯となるようなデザインとなっています。
ロングアイランドシティはマンハッタンの対岸にあるため、都会の喧騒から離れて時間を過ごしたい時にはぴったりだと思います。地元の家族連れや犬の散歩をしている人々、釣りを楽しむ人々、併設のカフェでおしゃべりを楽しむ人々、昼寝をしている人と、様々なアクティビティにあふれ、ゆったりとした贅沢な時間を過ごすことができる公園です。マンハッタンから少し足を伸ばし、是非行っていただきたい公園です。
2. ブルックリンブリッジパーク(Brooklyn Bridge Park)
住所:334 Furman St, Brooklyn, NY 11201
観光地としてとても有名なこちらの公園は、ダウンタウンブルックリン(通称ダンボ)の川沿いに位置する、敷地面積85エーカー、全長1.3マイルの広大な公園となっています。公園からはロウアーマンハッタンのスカイラインとブルックリンブリッジを見渡すことができます。
広大な芝生、ビーチ、フットサル、ビーチバレーコート、自転車レーン、フェリー乗り場など設備も充実していて、暖かい日はいつも多くの観光客や地元住民でにぎわっています。公園内にあるジャン・ヌーベルがデザインした、回転木馬を覆うガラスのボックスも、ランドマークとしてとても有名です。公園のすぐそばに位置するエンパイアストアは、築148年のコーヒー倉庫をコンバージョンした複合施設。面白い空間となっているので、是非ついでに足を運んでみてください。
1998年にダウンタウン・ブルックリン・ウォーターフロント・ローカルデベロップメントコーポレーション(Downtown Brooklyn Waterfront Local Development Corporationt)が設立され、ブルックリンブリッジパークの公共計画のプロセスを担いました。2002年には前ニューヨーク市長ブルームバーグ氏が公園の建設を監督するための組織、ブルックリン・ブリッジパーク・デベロップメントコーポレーション(Brooklyn Bridge Park Development Coorporation)の設立のために市、州の予算を割り当てることに同意しました。
その後、2004年にランドスケープアーキテクトが雇われ、2005年にマスタープランを公開しました。2008年に工事が始まり、2010年に第1期が完成。その後毎年、新たなエリアが続々とオープンし、規模を拡張し続けています。
現在はブルックリン・ブリッジパーク・コーポレーション(Brooklyn Bridge Park Corporation)という非営利団体が公園の計画、建設、メンテナンス、運営の責任を担っています。
3. リバーサイドパーク(Riverside Park)
住所:410 Riverside Dr, New York
ハドソン川沿いに位置する、72ストリートから158ストリートに渡る南北に長い公園で、マンハッタンにおけるもっとも美しいウォーターフロント公園として広く認知されています。自然にあふれ、とてものどかな雰囲気。時間が他の場所に比べてゆっくり流れているような感覚に陥り、マンハッタンにいることをつい忘れてしまうような公園です。
ランニング用のレーンやフットサルコートや小さなレストラン、子供用の遊具やスケートボードコーナーなど設備が充実しており、家族連れや、ランニングや散歩を楽しむニューヨーカーでにぎわっています。この公園はリバーサイドドライブ(通常の地面レベル)、海岸線レベル、プロムナードのレベル、という3つのレベルで構成されていて、海岸線レベルのエリアでは川をより密接に感じることができます。
春は桜の花が咲き、夏は新緑が青々とした爽やかな空間をつくりだし、赤や黄色など様々な色に紅葉した木々が秋の訪れを告げ、冬には広大な銀世界と化し幻想的な世界をつくり出す。四季とともに移ろう表情で、私たちを魅了してくれます。私は天気の良い日にはここで散歩を楽しんだり、課題読書に取り組んだりします。
4. ピア17 サウス・ストリート・シーポート(Pier 17: South Street Seaport)
住所:89 South St, New York, NY 10038
こちらは他の水辺空間とは異なり、公園ではなく、桟橋の上につくられた空間となっています。今回ご紹介するピア17は、ロウワーマンハッタンのイーストリバー沿いに位置する、サウス・ストリート・シーポートという地域にあります。このエリアは19世紀から国際海運、開示活動、卸売魚取引の玄関口としてニューヨークの輸出入業を支えてきた、歴史的な地域です。またこのエリアは「船の道(Street of Ships)」としても知られ、当時使われていた船舶などがサウス・ストリート・シーポート美術館に収蔵されています。
2012年にニューヨークを襲ったハリケーン・サンディーはサウス・ストリート・シーポートエリアに大きな損傷を残しました。美術館は一時的に閉鎖され、ピア17の既存建物の取り壊しが決まりました。2013年3月にニューヨーク市議会は、民間企業(Howard Hughes Corporation)が新たな建物を建設することを認可し、2018年7月にピア17がリニューアルオープンしました。
こちらの川辺空間では遊歩道、ピア、ストリートファーニチャーのデザインがとても多様です。以前の記事(NYのパブリックスペースのデザイン審査機関 「パブリックデザインコミッション」とは?)で紹介したニューヨークパブリックデザインコミッションを兼任しているジャスティン・ムーア先生が、授業の一環でこちらの公園を案内しました。このピアのリニューアル工事は主に民間企業が担いましたが、市と上手く協力し、成功した事例とのことです。
オープンスーペースにはブランコ型のベンチや遊具があり、遊び心のあふれるデザインとなってます。このような一風変わった遊具や家具は、民間主導のプロジェクトならではと思います。
スロープを上がると、違うレベルでデッキ部分を楽しむことができます。スロープは緩やかな勾配で構成されているため、そのような場所を好むスケートボードをする若者の侵入を禁止するために、設計後期に市がデザインに介入したそうです。上の写真の右端部にある椅子も、雨水が溜まってしまうという理由で後から穴を開けるなど、とても細かいレベルまで市がチェックしているそうです。
桟橋であるため、他の場所と異なりグリーンスペースが少ないですが、それなりの芝生もあり、ユニークなデザインのとても面白い水辺空間となっています。一度ハリケーンにより大きな被害を被ったエリアであるからこそ、災害対策も十分盛り込んだデザインとなっています。ピア17ではイベントも定期的に開催。新旧が入り混じるサウス・ストリート・シーポートエリアは、歩くだけでもとても楽しいです。
5. ドミノパーク(Domino Park)
住所: Brooklyn, NY 11249
ドミノパークは、ウィリアムズバーグというブルックリンの若者に人気のエリアの水辺に位置する公園です。2018年6月にオープン。市の行政機関ではなく、Two Trees Management Companyという企業が運営しています。ハイラインの設計を担当したJames Corner Field Operationというランドスケープ会社と連携し、デザインが考案されました。
2004年にドミノシュガーファクトリーが閉鎖された後、この11エーカーの敷地は、市とコミュニティの利害関係者、そしてドミノからその敷地を購入したデベロッパーよって再開発計画の俎上に載ったものの、休眠状態にありました。2010年、市がついに住居用のゾーニングを認め、これを受けて2013年、Two Trees Management Companyが再開発計画を作成するためのプロセスを開始。その計画には、ランドマークの精製工場をオフィスにコンバージョンすることや、700のアフォーダブルハウジングを含む複合開発、ウォーターフロントに5エーカーに及ぶ公園を建設することなど、多様なコミュニティのニーズが盛り込まれていました。
ドミノパークでは、かつてこの地域が工場地域として栄えていたという歴史を、公園一帯のデザインに垣間見ることができます。ドミノ工場の生砂糖の旧倉庫から再利用された柱が、高架の通路が形成しています。より高い位置から、マンハッタンのスカイラインやイーストリバーを眺めることができます。
ベンチの後方に見える巨大なレンガの建築物は、市のランドマークにも登録されたもの。かつては精製所として使われていました。この建物は、フィルターハウスという未加工の糖液から不純物を除去する施設、パンハウスという精製された砂糖を結晶化するために使用する大きな真空皿と遠心分離機からなる施設と、フィニッシングハウスという出荷前の選別や包装などの最後の工程のための施設で構成されていました。
ブルックリンをベースとするアーティストがデザインしたこのプレイグラウンドは遊び心にあふれ、砂糖工場の150年にわたる歴史を反映したデザインとなっています。サトウキビ小屋から始まり、砂糖水貯蔵貯蔵庫、遠心分離機とつながっており、砂糖の製造過程を楽しめるような設えとなっています。
かつての製油所の壁から回収した木材、回収されたバルブホイールからつくられたアルミ型、そしてドミノ工場の看板を基にしたグラフィックも特徴となっており、他では見ることのできないであろうユニークなデザインとなっています。
ドミノパークは、かつてその場所にあった建物の一部を利用するなど、とてもユニークで地元愛が感じられる公園となっています。ランドマークに指定された建築物の開発が始まると、より一層公園に訪れる人も増え、エネルギーにあふれるエリアになると思います。
洪水対策は日米共通の課題
地元住民に愛されている緑豊かな広大な公園から、日本では見られないような斬新なアイデアが詰め込まれている公園まで、多様な事例を紹介しました。
ニューヨーク市の中心部にあるマンハッタンは、あまりそういうイメージはないかもしれませんが「島」であり、ハドソン川とイーストリバーという2つの川に挟まれています。そのため、とても豊かな水辺空間に恵まれています。その半面、ハリケーンなどによる洪水の被害も多いため、新たなプロジェクトの際には絶対に災害対策(Resiliency)を考慮しなければならないなど、水辺との関わり方をとても重要視しています。
現在の水辺空間における大きなプロジェクトといえば、ウォール街などを含むロウアーマンハッタン一体の水辺空間に、洪水やハリケーンから街を守る役割を担う公園を建設する「The Big U」というプロジェクトです。
津波や台風による被害も多い災害大国である日本では、自然との共存、被害の軽減の方法を常に考えなければならないと思います。地球温暖化が進み気候変動が著しい現在では、災害対策が特に重要なポイントの1つになってくると思います。ニューヨークもハリケーンや洪水による被害が多い都市であり、あらゆる計画に水害対策の考慮を求めています。一見共通項がないように見えるニューヨークと日本の都市ですが、日本の都市とも懸念をシェアしているので、私たちもデザインや計画、マネジメントの観点から学ぶことができる点は多くあると思います。
All Photos by Shiori OSAKATA
掲載記事:http://sotonoba.place/newyork-waterfront5