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今ある枠組みや既成概念を越えて、多様なパートナーと共に未来へ繋げる街づくり  ~「生存特区」の共創パートナー6社より、受賞企業が決定~

 三井不動産グループでは、ロゴマークの「&」に象徴される「共生・共存」「多様な価値観の連繋」「持続可能な社会の実現」の理念のもと、グループビジョンに「&EARTH」を掲げています。街づくりを通して、人と地球がともに豊かになる社会に向けた取り組みをお届けしてまいります。
 今回は、三井不動産の創立80周年記念事業として生まれた「未来特区プロジェクト」の取り組みを紹介します。既存の枠組みや概念にとらわれず、三井不動産の社員が新たな都市のあり方を考え、人と繋がり事業創造を進めてきた「未来づくりの一歩」。三井不動産が見据える未来都市とはどんなものなのか。社員インタビューを交えて新たな取り組みとともにお届けします。

  • パートナーとの共創を通じて未来の都市の可能性を創造する「未来特区プロジェクト」

 「未来特区プロジェクト」は、未来の街づくりの模索を目的として2020年にスタートしました。若手を中心にさまざまな部署の社員が集まり、柔軟な発想と自由闊達なディスカッションを通じて、次世代の街づくりとは何かを追求してきました。

 プロジェクトチームでは、「都市機能の本質」として「生存」「コミュニケーション」「文化」の3テーマを設定。テーマごとに、スタートアップや学界の専門家、クリエイターなど幅広いバックグラウンドを持つパートナーと協働を進めてきました。

 そして2022年5月27日には、プロジェクトの集大成として「未来特区カンファレンス」を開催。これからの街づくりのあり方についてさらに議論を深めると同時に、既存の枠組みを越えて新しいことに挑戦することの意義や、多様なパートナーとの協働がもたらす未来の可能性を再確認しました。

生存特区プロジェクト
自立的で持続可能な街を実現する新時代のインフラ事業共創

人々の「生存」を支えて暮らしを守るインフラサービスは、自立的でサステナブルな街づくりを実現するための根幹的存在ともいえます。今回は「都市の自立性を高めるテクノロジー」をテーマに、「資源循環」「廃棄物循環」「食料生産」「安心・安全」「拡張生態系」といったインフラ関連領域で共創アイデアを公募。50を超える応募の中から選ばれた6社がカンファレンスでピッチを開催し、当社と共に創るイノベーティブな事業アイデアを披露しました。

<生存特区共創パートナー6社>

※「未来特区カンファレンス」開催(5月27日)時点での、社名並びにロゴを五十音順で掲載。日本環境設計株式会社は6月1日付で、株式会社JEPLANに商号変更しています。

コミュニケーション特区プロジェクト
コロナ以後のイノベーションを加速する「つながり方」の再設計

いつの時代にもイノベーション創出の基盤として機能してきたコミュニケーションですが、急速なデジタル化とパンデミックを経て、そのあり方は大きく変化しつつあります。本プロジェクトでは、テクノロジーの力で「出会い」と「関係構築」を再設計し、イノベーションの創出と加速を目指します。アカデミアの知見も積極的に取り入れながら、新時代のコミュニケーション環境を提供するソフトウェアの開発に取り組んでいます。

現実以前の建築”UN/BUILT”というコンセプトのもと共創するクリエーターと協議し、創造活動を行ってきたアート作品を日本橋で展示。NFT化によるデジタルアート販売の場も構築している。
[2022/5/27~6/19開催。販売は、6/18より開始(予定)]

クリエイター特区プロジェクト
創造的な「場」づくりを通してもっとワクワクする街へ

文化の源泉であるクリエイターは、都市の可能性を拡げるキーパーソンです。そこで今回は、作品を展示し、作品に触れあう「場」そのものをクリエイターと共に創造し、街に新しいアイデアを実装しました。
リアル・デジタル・デジタルオンリアル(AR)という3つの場にアートを展示する「リアル・デジタル融合型ギャラリー」を日本橋に展開。さらに日本橋を舞台としたARアートのアイデアソンでは約500点から選ばれた2点のアイデアが川田十夢氏*率いる開発ユニット(AR三兄弟)によって作品化され、カンファレンスで披露されました。

*川田十夢氏:10年間のメーカー勤務で特許開発に従事したあと、開発ユニットAR三兄弟の長男として活動。今回プロジェクトパートナーとして参画。

AR三兄弟 作品:AR三兄弟の「社会実験」アプリ(無料)をDLし、アプリ上でリアル空間上に浮かび上がるアートを鑑賞できる。(2022/5/27~6/19)

  • 未来の街づくりの「Day 1」─「未来特区カンファレンス」レポート

プロジェクトの成果を公に発表する初の機会となるカンファレンスを5月27日に開催。数多くの参加応募をいただき、幅広い領域から約200名が会場に集いました。

 
カンファレンスの劈頭を飾ったのは、科学・経済啓蒙家マット・リドレー氏による基調講演「都市と人類とイノベーション」です。イノベーションの源泉たる都市の要件を歴史的視座から検討し、そこで営まれる協働を不可欠なものとする氏の議論は、多様性にひらかれた自由な街づくりの必要性を再確認させるものでした。

 続くプログラムは「ネクスト未来特区セッション」と題して、これからの街に求められるものやそのためにできることを参加者どうしで自由にディスカッションする場としました。普段は異なる分野で活動する人々が一堂に会して意見を交わし、街づくりの可能性を広げるアイデアが生まれるアクティブな時間となりました。

 その後、「生存特区」の共創パートナー6社より三井不動産との事業共創アイデアを発表。半年間の議論を経てブラッシュアップされたビジョンが、より良い未来への熱い想いとともに語られました。審査の結果、株式会社Yanekaraが優勝、株式会社TOWINGが準優勝を収めました。

 「コミュニケーション特区」では、新時代に即した関係構築のあり方を模索しているゲストを交えてパネルディスカッションを実施。これからの時代に求められる出会いや対話の形を自由闊達に話し合うとともに、新しいコミュニケーションの形を追求する「Digital BASE Q」プロジェクトの構想を発表しました。

 「クリエイター特区」では、場づくりや作品の制作に携わった複数のメンバーが共創のプロトタイプをお披露目。街に息づく新しいアートやそこに生まれる未来の文化を感じさせる、刺激的なプレゼンテーションとなりました。

 登壇者や来場者から飛び出す多種多様な意見が、都市の可能性をいっそう広めた今回のカンファレンス。これを第一歩として、未来特区プロジェクトで構想してきた未来の街づくりに向けて、さまざまなパートナーと共に事業に繋げていきます。

優勝企業:株式会社Yanekara
2020年6月設立の東大発スタートアップ。電気自動車を用いて電力需給バランスの安定化を図る次世代型V2Xプラットフォームを開発している。

カンファレンスでは、三井不動産の持つ国内有数のEVや蓄電池などをYanekaraの次世代型V2Xプラットフォーム「YaneBox」で群制御して調整電力として提供し、2030年代の電力需給バランスを支える事業アイディアを発表。具体的なビジョンとソフト・ハード両面の開発力を有すること。そして、三井不動産のアセットをフル活用することでシナジー効果の高い共創が見込まれる領域であることが評価されました。

準優勝企業:株式会社TOWING
宇宙農業実現と地球農業発展を目指す名古屋大発ベンチャー企業。多孔体に特定の土壌微生物環境を培養し、良質土壌を再現する技術※1を駆使して、持続可能かつ高効率な作物栽培システムを開発している。

カンファレンスでは、TOWINGが開発している大地への炭素固定が可能な“宙(そら)苗”※2を活用して、企業と農家を繋ぎ、環境貢献データと作物を販売する宙農プラットフォーム運営計画を発表。

土壌の高機能化と炭素固定を両立した技術の独創性と、「炭素固定の履歴をもった食品」という市場の創造性が評価されました。

※1:植物の炭等の多孔体に微生物を付加し、有機質肥料を混ぜ合わせて適切な状態で管理してつくられた人工土壌の技術。国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構が開発した技術に基づき、TOWINGが栽培システムとして実用化。
※2:商標出願中

  • PROJECT STORY 多様な「個」の協働が、自由な挑戦を可能にする

未来特区プロジェクト・プロデューサー/ベンチャー共創事業部 川瀬康司未来特区プロジェクト・プロデューサー/ベンチャー共創事業部 川瀬康司
未来特区プロデューサーとしてプロジェクトの先頭に立ち、精鋭チームを率いてきた川瀬康司(ベンチャー共創事業部)に、チームの発足から共創に至るまでの取り組み、今後の展望を聞きました。

事業横断型チームだからこそ見出だせた「街づくりの本質」

-「未来特区プロジェクト」が発足した当時のことを教えてください。
ベンチャー共創事業部未来特区プロデューサー川瀬康司(以下、川瀬): 
このプロジェクトが始動したのは、2020年のことでした。「80周年を機にアイデアソンのような取り組みでイノベーションの種を見つけられないか」という副社長(当時)の呼びかけで、私を含む社員8名が招集されたのが始まりです。そのとき集まった8名の所属部署はバラバラでした。ベンチャー共創事業部、ライフサイエンス・イノベーション推進部、日本橋街づくり推進部、商業施設本部、そして海外事業本部……多様なバックグラウンドを持つメンバーが、一つのチームとしてプロジェクトに取り組むことになったわけです。

座長は発起人である副社長でしたが、若い感性を活かしてほしいという意向のもと、進行はすべて私たち8名に任されました。つまり「何でもやって良い」という状況です。そこで、まずは一人ひとりが「自分は何をやりたいのか」を考えるところからスタートしました。

-事業部横断型のプロジェクトは、普段の業務と比べていかがでしたか。
川瀬: 
それぞれの事業部には独自のミッションがありますよね。例えば私が所属するベンチャー共創事
業部なら「スタートアップとの共創を通じて自社でイノベーションを起こす」というゴールが前提に
あって、その枠組みの中で仕事に取り組むことになります。

しかし今回は、「どこをゴールに設定するか」「何をミッションとするか」という部分からすべて自分たちで決定していく必要がありました。

こういった状況下で、メンバーがそれぞれ違う部署から来ており、「共通の前提」を持っていないことがポジティブに働いたと思います。なんの枠組みにもとらわれることなく、それぞれが互いの「個」としての興味関心を尊重し、自由で柔軟な発想でディスカッションを進めることができたからです。

-まっさらな状態からプロジェクトを形にするにあたり、苦労したことはありませんでしたか?
川瀬
: 
意欲的なメンバーばかりで構成されるチームなので、「やってみたいこと」のアイデアは本当にたくさん集まりました。ただ、それらの多彩なアイデアを「未来都市」という大きな主題のもとにまとめていくのは大変でしたね。街づくりにおいて何が一番本質的なことなのか、何度も議論を重ねる必要がありました。

最終的にチームの意見がまとまったきっかけは、「2041年に創立100周年を迎えるとき、三井不動産
はどのような存在になっているべきか」を考えたことだと思います。自由にアイデアを出し切ったあと
にもう一度原点に立ち返って議論することで、「生存」「コミュニケーション」「文化」という3つのテーマが自然と浮かび上がってきました。普段から社員一人ひとりが自分の中に「三井不動産の理想像」を抱いている、その社風に助けられたと思っています。

「やりたいことベースで」、「決めつけないで」進めた未来の共創

-テーマの決定後は、どのように共創の取り組みを進めてきたのでしょうか。
川瀬
: 
今回は、3つのテーマに対してそれぞれ異なるアプローチを採用しました。目指すゴールに合わせて、パートナーの募り方やコンセプトの打ち出し方などを変えたのです。これは、本プロジェクトの大きな特徴の一つだと思います。

例えば「生存特区」では、三井不動産グループとの共創アイディアを募集して審査するというアクセラレーションプログラムに近い形を取りました。一方「コミュニケーション特区」では、抽象度の高いコンセプトを前面に押し出し、アカデミアも含めてコンセプトへの興味関心を共有できるメンバーを募りました。そして「クリエイター特区」では、文化を生み出す場づくりという大きな目標に対してミニマルでわかりやすいプロトタイプを構築・提示し、一般の方も巻き込んだ仕組みづくりに挑戦しています。

このように複数のアプローチを試してみてわかったのは、「何をやりたいかによって適切なやり方は違う」ということです。「これが常に正しい」と言えるものはなく、応募のハードルをどれくらいの高さに設定するか、提示するコンセプトの抽象度をどうするかなど、あらゆるパラメータを目的に合わせて細かく調整していくことが大切だと学びました。今後ほかのプロジェクトでも、「やりたいことベース」で都度やり方を決めていくのが良いと思っています。

-プロジェクトを通して、新たに気づいたことはありましたか?
川瀬
: 
今回のプロジェクトでは、先端分野のクリエイターや学界の研究者など、従来の業務では関わる機会がなかった方との協働が叶いました。より正確には、「アカデミアの研究者でもありビジネスパーソンでもある」「本業とは別にクリエイターとしての顔も持っている」など、簡単にはラベリングできない人々と関わる機会に恵まれたといったほうがよいかもしれません。

そういった人々との協働を通して、「この人は◯◯だから××だ」「こういう場面ではこうするのが普通だ」という決めつけやラベリングに陥らないことの重要性を学びました。既成概念にとらわれない、常に多様性にひらかれた思考こそが自由な発想の土壌になり、オープンイノベーションを加速させていくのだと思います。

一人ひとりの想いをエネルギーに、新しいことに挑戦し続ける三井不動産へ

-「未来特区カンファレンス」を終えての感想と、これからの構想を教えてください。
川瀬
: 
プロジェクトを通じて、「街づくりをよりいっそう進化・深化させる」という全社的なミッションはもちろん、社員が持っている「個」としての力・想いの強さや、それを尊重して活かす三井不動産の社風も伝えられたと思っています。

このカンファレンスを区切りに、本プロジェクトでの取り組みはベンチャー共創事業部に引き継がれることになります。これまで多くの方々と一緒に蒔いてきた街づくりの種を大切にして、大きな樹へと育てていきたいですね。長い時間軸で事業に取り組み続けてきたデベロッパーとして、10年、20年先も街を支え続けられるような事業を共創したいと思って
います。

-社内の反響はいかがでしたか。
川瀬
: 
幅広い方々から高い評価をいただいています。アッパー・ミドル層からは「久しぶりに『新しいこと』が実現して嬉しい」と、若年層からは「自分も『新しいこと』に挑戦して良いんだと思えた」と言っていただくことが多いですね。

よくも悪くも「大きな会社」である三井不動産では、個々人の業務範囲がどうしても固定化しやすく、「気軽に新しいことをやるのは簡単ではない」という空気になりがちです。かつては有志を募って新しい企画を練るケースも多かったようですが、会社規模が大きくなり、コロナ禍で雑談の機会も減少する中、興味関心が一致する仲間を探すのも難しくなっています。その結果、ベテランは「最近は新しいことに挑む文化がなくなっている」と嘆き、若手は「そもそも新しいことを始める方法がわからない」と悩む状況がありました。

今回、ほとんど白紙の状態から、メンバーそれぞれの興味ドリブンでプロジェクトをやり遂げたことによって、大きい会社にいながら自由に新しいことをやる方法が可視化できたと思います。まずは未来特区プロジェクトのメンバーが今回の経験をそれぞれの持ち場に持ち帰って、身近な人を巻き込みながら、どんどん新たなチャレンジをしていけると理想的ですね。

ますます変化が激しくなるであろう未来の街づくりに取り組む組織として、三井不動産にはよりいっそう自由で柔軟な発想が求められるはずです。社員一人ひとりの力や想いをエネルギーに、より多くのパートナーと協働しながら、街に関わるすべての人と、未来に向かって進化/深化し続ける─そういった「これからの三井不動産」のあり方が、今回のプロジェクトをきっかけに伝わっていれば嬉しいです。

三井不動産グループのSDGsへの貢献について
三井不動産グループは、「共生・共存」「多様な価値観の連繋」「持続可能な社会の実現」の理念のもと、人と地球がともに豊かになる社会を目指し、環境(E)・社会(S)・ガバナンス(G)を意識した事業推進、すなわちESG経営を推進しております。さらに「重点的に取り組む6つの目標」に取り組むことで「Society 5.0」の実現や、「SDGs」の達成に大きく貢献できるものと考えています。
https://www.mitsuifudosan.co.jp/corporate/esg_csr/

重点的に取り組む6つの目標
1. 街づくりを通した超スマート社会の実現
2. 多様な人材が活躍できる社会の実現
3. 健やか・安全・安心なくらしの実現
4. オープンイノベーションによる新産業の創造
5. 環境負荷の低減とエネルギーの創出
6. コンプライアンス・ガバナンスの継続的な向上

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