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4人に1人が農山村移住の意向あり。移住先では農林漁業のほか、テレワークを活用した就業を希望!屋外活動への関心が5割を超え、3密を避けたレジャー空間の上位は「山」や「森」が注目を集める

<新しい日常における森林活用の意向調査>

林野庁 “令和元年度「森林サービス産業」緊急対策事業” を受託する森林サービス産業プロモーション共同企業体は、20代〜50代の男女3,200名に対し、「新しい日常における森林活用の意向調査」を実施しました。本調査では、国土の約7割を占める広大な森林空間と農山村の活用に関する意向を調査することを目的としており、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)感染拡大にともない新しい日常の浸透が進む社会で、森林に対してどのような意向を持っているのかを明らかにしました。
 その結果、農山村移住の意向は24.4%、約4人に1人でした。また、移住希望者による「テレワーク可能時での移住意向」は7割を超えていました。
<調査サマリー>
•農山村移住の意向は24.4%

•移住・定住希望の理由は「山・川・海などの自然にあふれた魅力的な環境だから」 (65.0%)

「都会の生活に疲れたから」(34.6%)が上位。 15.7% は「コロナウイルスの影響を避けるため」と回答しており、新型コロナウイルス感染拡大の影響があることも明らかに

•移住希望者の希望業種は「農業」が1位(39.7%)。 次いで、「第3次産業」 (23.8%)、
「林業」 は18.6%で、「IT情報関連」 「再生エネルギー産業」 が各約17%で林業に次ぐ多さ

•移住希望者による「テレワーク可能時での移住意向」は7割超

•約5割 (51.3%)が3密を避けた屋外活動への関心あり
 3密を回避できるレジャーの上位は「山」 (48.2%)、 「森」 (43.0%) という結果に



<調査概要>
調査名 :新しい日常における森林活用の意向調査
実施期間:2020年6月26日(金)〜6月29日(月)
対象  :20代~50代の男女 3,200名
調査方法:インターネット調査

<森林サービス産業プロモーション共同企業体 >
当共同企業体は林野庁“令和元年度「森林サービス産業」緊急対策事業”を受託して事業を行う民間組織です。 株式会社I&S BBDO(東京)、株式会社スペースキー(東京)、株式会社武田林業(愛媛)の三社からなる企業体で、 「森林サービス産業※」の展開を通じて、新たな需要者層の拡大のためのプロモーション等を実施します。

※森林サービス産業とは、平成30年度に林野庁より提唱されている新たなサービス産業で、山村の活性化に向けた「関係人口」の創出・拡大のため、森林空間を健康、観光、教育等の多様な分野で活用するものです。
 

  • 農山村移住の意向は4人に1人!

農山村への移住・定住意向率を調査すると、“意向率”は、24.4%となり、約4人に1人が農山村部への移住の意向を持っていることが確認できました。

移住希望者に意向理由を聞いたところ、「自然にあふれた魅力的な環境だから」(65.0%)が突出して高く、農山村特有の自然に価値を持っている人が多いことがわかりました。次いで「都会に疲れた」(34.6%)といった回答も一定数いることが明らかとなりました。また、「コロナウイルスの影響を避けるため」と15.7%が回答しており、移住・定住意向に関してもコロナウイルス感染拡大の影響を受けていることがわかりました。また、農山漁村への移住の理由を年代や男女差別で読み解くと、年代や男女差によって特徴が見受けられました。子育て世代の20代〜40代の男性の約4割(41.5%)が「都会の生活に疲れたから」と回答し、20代〜40代の女性は「子育てに適しているから」と約6割(57.5%)が回答していました。男女問わず年齢が上がるにつれ、「魅力的な自然環境の存在」を理由に挙げる割合が高くなる傾向となりました。

移住時の希望業種に関しては、最も「農業」(39.7%)に回答が集まりました。次いで、「第3次産業」が23.8%、「林業」が18.6%となり、「IT・情報産業関連」(16.9%)や「再生可能エネルギー産業」(16.6%)にも回答が分散されました。これらのことから、移住時の希望職種は様々であることがわかりました。

  • テレワーク可能時の移住意向は7割超

移住希望者にテレワークが可能になった場合の移住意向を伺ったところ、71.9%が移住の意向を示していました。このことから、新しい日常で推奨されているテレワークという働き方が現在より社会に浸透していければ、移住・定住者もより増加していくことが推測できます。 

  • 3密を避けた屋外活動の関心は5割超!回避できそうなレジャー空間の上位は「山」「森」

3密を避けた屋外活動への関心については、「とても関心がある」(17.5%)、「やや関心がある」(33.7%)と回答しており、51.3%が関心あることがわかりました。また、3密を回避できそうなレジャー空間について聞いたところ、回答の上位は「山」(48.2%)、「森」(43.0%)となり、森林空間は3密を回避できるレジャー空間であると4割超の人が認識していました。

この結果から、コロナ禍の環境を受けて屋外活動への関心が高まっており、3密を避けたレジャー空間として森林の役割が高まっていくことが期待されます。

  • 男性より女性の方がアウトドアに「非日常」を求める傾向に

アウトドア(野外で活動すること)について、好意的だと回答した方(51.2%)に対しアウトドアへの魅力を伺ったところ、半数以上が「清々しい空気」(67.3%)、「景色・景観」(56.2%) と回答しました。また、男女別で読み解くと、女性は「日頃のストレスが解消できる」 (54.6%) 「日頃と違った非日常を味わえる」(45.5%)「広い空間で過ごすことができる」(30.9%)などが男性より8%以上も高く、女性の方が「非日常」に対する魅力をアウトドアに求めていることが明らかとなりました。

  • 東海大学観光学部観光学科教授 田中 伸彦氏 コメント(森林空間利用促進プロモーション検討委員会 座長)

【ポストコロナ時代における農山村の森林活用への意識を捉えることができた】
今回、「森林サービス産業緊急対策事業」で行ったWEB調査は、日本国内の新型コロナ感染者数がいったんおさまり、再び大きく増加する直前といえる2020年6月26日(金)~ 6月29日(月)にアンケートを聞くことができました。つまり、日本国民が「アフターコロナ」「ポストコロナ」の世界に向けて現実味を持って進み始めることができるかもしれないと考えていた貴重な時期にとられた調査結果であるといえます。一方で、2020年7月後半から再び新型コロナの感染者数が増加しているため、国民の意識はさらに変動しているかもしれません。

【農山漁村で就きたい職業から持続可能な森林づくりのヒントが!】
農山漁村で就きたい職業は、農林漁業を中心としながらも、テレワークを活用したIT産業や再生可能エネルギー産業への就業希望も多いという結果が出ました。若い男性層(20代)については、まちづくりや観光、土木建設など魅力的な農山漁村を創り上げる仕事に魅力を感じていることも明らかとなりました。森林管理や森林計画においては、木材資源の管理だけではなく、森林サービス産業に活かせる魅力的な景観創りやトレイル整備など森林空間資源の管理へ積極的に取り組むことで若手移住候補者層や観光来訪者への支持が集まるのではないでしょうか。その際にはもちろんSDGsなどに配慮した持続可能な森林づくりへの配慮が欠かせないと考えられます。

【調査結果から、ポストコロナ時代に山村から情報発信すべきは森林レクリエーションの様々なアクティビティ】観光レクリエーションで森林空間(森・山・川・集落・キャンプ場などの複合体)への来訪を希望する国民は多いことが分かりました。新型コロナが終息するまでは、感染対策の徹底が必要であることは言うまでもありませんが、「ポストコロナ」時代を見据えて「新たな森林活用」に関するプロモーションを推進することも重要ではないでしょうか。山村がプロモーションを行う場合には、コロナ前とは違う、ポストコロナ時代での森林観光レクリエーション活動を紹介する「アクティビティベース」のインストラクション動画等の発信が重要ではないかとも推測できます。また、観光レクリエーションを受け入れる山村で実際に働いている人がどの様な生活を送っているのかを紹介する様な動画等の制作・発信なども効果があると考えられます。
 

  • 一般社団法人コンサベーション·アライアンス·ジャパン事務局長 滝沢 守生氏コメント

【ライフスタイルの事例の蓄積と、市場・流通の多様化が移住の追い風に!】
農山村部への移住・定住の抵抗が少しづつ減っていることは、これまで行ってきた各地での地域おこし協力隊や、研修制度の充実が少しづつ花開いた結果だという印象を受けます。また、移住者がその生活の様子をSNSを通じ情報を発信することも増え、移住した後のライフスタイルもイメージしやすくなったことも影響していると考えられます。ソーシャルの繋がりによって、ライフスタイルの事例ができてきたことは農山村部への移住・定住の追い風だと感じています。

移住した後の仕事に関しても、職種は多様化してきています。テレワーク普及などの働き方改善はもちろんですが、「農業」や「林業」などの第一次産業においても、これまでとは違うビジネスチャンスは広がってきています。市場や流通が多様化したことで、生産者が直接消費者にモノを売ることができるようになりました。市場・流通の多様化も、移住のハードルを下げる要因になっています。今後、新しい日常へと移り変わる中で、農山村部への移住・定住の選択をする人が増えていく可能性が高いと思います。

【自然に負荷をかけず生活する暮らし方が今後のトレンドに!】
人口過密都市を中心に新型コロナウイルス感染が拡大しているだけではなく、地球温暖化や自然に対しての感度は高まっており、都市機能への不安感が今後も高まっていくことが予想されます。これは、これまでの生活を見直すいいチャンスだと感じます。農山村部は、食べ物・水が近くになり、自分で自分の生活をコントロールできるので、ますます注目される暮らし方ではないかなと思います。また、今後は働き方だけではなく教育の環境も多様化していくことが予想されます。授業がオンライン化されていけば、都市部と同様の教育を受けることができます。自然の中で自然に負荷をかけずに生活するスタイルが今後のトレンドになる可能性は高いと考えています。

【自然の中で遊ぶことを知る人が増えれば、レジャー空間としての森林の価値はより上昇する!】
新型コロナウイルスの感染拡大が叫ばれる中で、屋外活動への興味関心が5割に留まっているのは自然との距離が離れてしまった結果のように感じます。都市部での生活に慣れ、自然の中で遊ぶ遊び方を知らない人たちが増えたことが要因だと推測できます。一口に屋外活動といっても、夏といえば海水浴や花火大会をイメージする人も多いように屋外活動でも“密”な状態、“密”を避けた屋外の遊び方を知らない人が多いのかもしれません。しかし、感染拡大の影響で近所の公園で遊ぶ家庭が増えたと思います。これはいい意味で自然の中で遊ぶ世帯が増えたということ。今回のことで外に出て、自然に触れることの本質的な気持ち良さに気づいた人が増えたのは良いことだと思います。これを機に、屋外での様々な遊び方が普及してほしいと考えています。森林は“密”を避けれますし、国土の大半を占める森林での遊び方を知る人たちが今後増えれば、レジャー空間として森林の価値は今後高まっていくのではないでしょうか。
 

  • 専門家プロフィール

田中 伸彦氏

東海大学観光学部観光学科教授。
東京大学農学部林学科卒業、博士(農学:東京大学)。
農林水産省森林総合研究所研究員、林野庁研究・保全課研究企画官、独立行政法人森林総合研究所上席研究員などを歴任し、2010年より現職。専門は、観光学、森林風致計画学、造園学、レジャー・レクリエーション学。

東京都農林漁業振興対策審議会専門員、茨城県つくば市緑の基本計画策定委員会委員、林野庁林業普及指導員資格審査試験委員などを歴任。国際森林研究機関連合(IUFRO)6.03自然地域観光部門副委員長や日本森林学会評議員、日本レジャー・レクリエーション学会常任理事、農村計画学会評議員、日本造園学会関東支部長などを務める。
 

滝沢 守生氏

一般社団法人コンサベーション·アライアンス·ジャパン事務局長。
アウトドアカルチャーのニュースサイト『Akimama』の配信をはじめ、野外イベントの運営制作を行なう「キャンプよろず相談所」を主宰する株式会社ヨンロクニ代表。学生時代より長年にわたり、国内外で登山活動を展開し、その後、専門出版社である山と溪谷社に入社。『山と溪谷』『Outdoor』『Rock & Snow』などの雑誌編集に携わった後、独立し、現在に至る。

一般社団法人コンサベーション·アライアンス·ジャパン https://outdoorconservation.jp/overview

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