近年、AI・IoTの普及により、センサーを活用して都市の利便性やセキュリティを向上するスマートシティの実現に向けた取り組みが各地で進められています。今後のスマートシティでは、これまで個々に利用・管理されていたエリアの情報(道路などの社会インフラ、施設の利用状況など)や人の状況(位置、人流、活動状況など)といった様々な分野にまたがった複数のデータを組み合わせて利活用することで、より安全で効率的な都市を実現することが求められています※1。
本実証実験では、そのようなスマートシティの実現に向け、これらのデータを収集・整理するデータの連携基盤である「都市OS」※2において、データ活用を実現するために必要な機能部※3の有用性の確認と、様々な分野のデータの組み合わせにより創造した価値の検証を行いました。※1:「スマートシティ実証実験」実施報告書(APIR「都市におけるIoT活用」研究会より発行)
※2:「都市Operation System」の略。様々なデータや各種サービスのデータを集約し、利活用を促進する仕組み。
※3:本実験では、様々な分野のデータを「都市OS」へ集約する「個別システム連携機能部」、データの加工・可視化をする「データカタログ機能部」を実装しました。
2.実施概要
本実証実験では、グランフロント大阪に約170台のセンサー・カメラを設置し、「まちのセンシング」を実施しました。実験により取得した人流や混雑度、音量、音質、温度情報等に加え、同施設の空調機器やBEMS※4等のビル管理情報など、複数のデータを「都市OS」に集約し、様々な分野のデータを組み合わせて創造した価値の検証を行いました※5。また取得したデータの一部については、館内におけるレストランの混雑状況の表示サービス・トイレの満空状況の表示サービスとして、来街者へ提供しました。
※4: 「Building Energy Management System」の略。ビルの機器・設備等の運転管理によってエネルギー消費量の削減を図るためのシステムのことです。
※5:本実証実験の結果報告については、APIR主催のフォーラムにおいて発表を行い、同内容を後日APIRの公式ホームページ上で公表予定です。
◇APIR公式ホームページ
https://www.apir.or.jp/ja/
図1: 実証実験イメージ
3.主な取組み・効果
①「都市OS」のデータ活用を促進する機能部の検証
本実験では、様々な分野のデータを「都市OS」へ集約をする「個別システム連携機能部」と、データの加工・可視化をする「データカタログ機能部」を実装しました。これにより、様々なデータが「都市OS」に集約でき、「データカタログ」として各種データの一覧表示(可視化)が可能になりました。これらのカタログを閲覧することで、直観的に目的のデータを発見することができます。また、各種データを一覧で比較することができるため、様々なデータの組み合わせによる価値の創造が容易になりました。
図2:データカタログ画面
②データの組み合わせにより創造した価値の検証
〇空調エネルギーの効率化
複数のカメラ映像から収集した人物の位置推定データ、人流の予測データを分析し、空調エネルギー効率化に向けた検証を実施しました。その結果、数値シミュレーション※6では、各種データを活用して空調関連機器の制御を行うことで、全体の一次エネルギー消費量の削減について、一定の効果を期待できることが確認されました。
※6:ライフサイクルエネルギーマネジメント(LCEM)ツールを用いてシミュレーションを実施
〇レストラン混雑度における相関分析
レストランの混雑度や天候、入館者数のデータを組み合わせて、レストランの混雑に関するデータの相関分析を実施しました。結果として、特定の曜日および時間帯において、リアルタイムの入館者数とレストラン混雑度について相関関係があることが確認されました。将来的には、施設の運営管理情報や来街者の購買情報等を組み合わせることで、レストランフロアにおける混雑具合にあわせた運用の対応が可能となり、店舗の売り上げ管理に適用することが期待されます。
4.今後の展望について
本実験の検証で得られる知見を活かし、地域の社会課題解決にむけて、IoTを活用した新たな「街づくり」を推進していきます。