洪水浸水シミュレーションなども公開中
国土交通省が主導する、日本全国の3D都市モデルの整備・活用・オープンデータ化事業Project PLATEAU(プロジェクト プラトー)では、2021年度の新たなユースケース開発として4つの実証実験を開始しました。2021年度は特に社会的要請の高い課題や先進技術を取り込んだユースケース開発をテーマとしており、スマートシティの社会実装に向け実用性の高い実証実験が選定されました。
- ユースケース開発
太陽光発電ポテンシャル推計・反射光公害シミュレーション
〈株式会社三菱総合研究所・国際航業株式会社・株式会社フォーラムエイト・Pacific Spatial Solutions株式会社〉
石川県加賀市において、加賀市と連携し、建物の屋根面積、傾き、隣接建物による日陰発生など、3D都市モデルのデータを活かした都市スケールの太陽光発電ポテンシャル推計等のシミュレータを開発。都市内における太陽光発電普及に向けた施策検討への有用性を検証する。
自動運転車両の自己位置推定におけるVPS(Visual Positioning System)活用
〈株式会社三菱総合研究所・凸版印刷株式会社・国際航業株式会社〉
静岡県沼津市において、静岡県と連携し、カメラ画像から取得した情報と、3D 都市モデルの特徴点とを照らし合わせることにより、車両の自己位置を推定する VPS(Visual Positioning System)を開発。安価・効率的な自動運転システムへの活用可能性を検証する。
工事車両の交通シミュレーションVer2
〈株式会社竹中工務店・株式会社アクセンチュア〉
大阪府大阪市において、3D 都市モデルを用いた工事車両の搬入経路シミュレータを開発。地域住民の安全・安心や施工業者の円滑な資材搬入を実現する建設物流プラットフォームの構築を検証する。
大丸有 Area Management City Index(AMCI)
〈PwCアドバイザリー合同会社・株式会社アブストラクトエンジン(パノラマティクス)・一般社団法人大手町・丸の内・有楽町地区まちづくり協議会〉
大丸有(大手町・丸の内・有楽町)エリアにおいて、大丸有まちづくり協議会と連携し、エリアマネジメント活動のプラットフォーム“ AreaManagement City Index(AMCI)”を開発。まちづくり活動のビジュアライゼーションによる企業や個人の参加促進を検証する。
- 災害リスク情報の3D可視化
Project PLATEAUでは2020年度に44件のユースケースの開発を行った。公式ウェブサイトでは PLATEAUのデータをダウンロードすることなくブラウザ上でプレビューできる「PLATEAU VIEW」を公開中であり、ユースケースもこの中で閲覧可能となっている。2020年度開発ユースケースである全国48都市の洪水浸水想定区域の3D表示モデルも実装されており、津波浸水想定の3D表示モデル、土砂災害警戒区域の2D表示モデルとあわせて表示することができる。
台風や大雨による災害で注目度・重要度が増しているハザードマップだが、いまだ全国的な認知度は低い状態にある。3Dで都市を表示できるPLATEAUを活用することで、直感的に理解しやすい形で災害リスクを視覚化することが可能となり、より有用なハザードマップにつながると考えられているが、PLATEAU VIEWではその一端を体験することができる。
PLATEAU VIEWで災害リスクを表示した様
2021年8月に浸水被害のあった久留米市
久留米市の土砂災害警戒区域
- Project PLATEAUとは
Project PLATEAUは国土交通省が進める、まちづくりのデジタルトランスフォーメーション(UDX)を推進するための事業です。日本全国の3D都市モデルを整備し、オープンデータとして公開することで、誰もが自由に都市のデータを引き出すことが可能となり、防災、まちづくり、AR・VRなど様々な場面で活用できるようになります。3D都市モデルとは、実世界(フィジカル空間)の都市を仮想的な世界(サイバー空間)に再現した三次元の都市空間情報プラットフォームです。二次元の地図に建物・地形の高さや建物の形状などを掛け合わせて作成した三次元の地図に、建築物の名称や用途、建設年などの属性情報を加え、都市空間そのものをデジタル上で再現しました。
Project PLAEAUは、3D都市モデルを活用することで「全体最適・持続可能なまちづくり」「人間中心・市民参加型のまちづくり」「機動的で機敏なまちづくり」の実現を目指していきます。
ウェブサイト:www.mlit.go.jp/plateau/
- 国土交通省 都市局 担当者コメント
PLATEAUは2020年度にスタートした国土交通省の新しいプロジェクトであり、今年度も、昨年度に引き続き3D都市モデルという新しい技術のポテンシャルを引き出すための実証実験に積極的に取り組んでいきます。具体的には、今年度は「自動運転」や「カーボンニュートラル」といった社会的要請の高いテーマを設定し、3D都市モデルがこれらの課題解決にどのように貢献できるのか、技術実証を進めます。ほかにも、3D都市モデルの優れたビジュアライズの機能を活用したまちづくり活動(エリアマネジメント)の可視化や、工事車両の最適なオペレーションを実現するシミュレータなど、都市が抱える課題を解決するためのユースケースを開発しています。また、防災分野については昨年度から取り組みを進めており、ハザードマップの3次元化による防災意識の啓発や都市全体のリスク分布の分析といった、3D都市モデルがあればすぐにでも活用可能なスケールしやすいユースケースの普及を行っています。
民間市場の領域でも、PLATEAUのオープンデータを自社のシステムやプロダクトに取り入れる事例や、新たなサービスをローンチする事例など、市場における活用が広がってきています。
3D都市モデルは今後の社会における基礎的なデジタル・インフラに位置づけられるものです。国土交通省として、引き続き全国への普及とユースケースの開発を先導し、3D都市モデルの整備・活用・オープンデータ化のエコシステムを確立することを目指していきます。
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