
TAKANAWA GATEWAY CITYが目指す「心豊かな暮らし」と、それを支えるエリアマネジメントの取り組み。そして、2025年という「昭和100年」の節目に見据える未来のまちづくりとは――。
今回は、この先進的なプロジェクトに深く関わる、KDDI株式会社の多々良里佳さんにお話を伺いました。スマートシティ事業からAIビジネスへとフィールドを広げ、テクノロジーと人を結び、未来の街を創造する多々良さんのビジョンに迫ります。

「100年」の節目に見る未来のまちづくり
2025年、TAKANAWA GATEWAY CITYが未来へ向けて本格的に始動します。この街は「あなたに気付く街」「みんなで築く街」というユニークなコンセプトを掲げ、テクノロジーを駆使した新しい都市のあり方を追求しています。これは単なる再開発ではなく、歴史ある高輪の地に「心豊かな暮らし」を創造する取り組みと言えるでしょう。
多々良さんは、スマートシティ事業からAIビジネスへとフィールドを広げ、街に命を吹き込む「まちアプリ」のサービスデザイナーとして、街と人とのつながりを創造してきました。
2025年という「昭和100年」の節目に、この街が目指すビジョンとは何でしょうか。多々良さんが語る、テクノロジーがもたらす「街の感覚器官」としてのAIの可能性、そして「エリアマネジメントスクール」での学びが実際のプロジェクトにどう活かされているのか。未来のヒントが詰まったインタビューです。
「あなたに気付く街」を体現する、TAKANAWA GATEWAY CITYの挑戦
――貴社はTAKANAWA GATEWAY CITYへ本社を移転されたとのことですが、この移転にはどのような意味があるのでしょうか?
(多々良さん)KDDIとして自らがスマートシティを体現していく、という強い意志の表れだと捉えています。私たちはTAKANAWA GATEWAY CITYにおいて、街の様々なデータとお客様の登録情報などを活用し、お客さまが欲しいタイミングで情報を提供するなど、街中がもっと快適になる「まちアプリ」や、自律的に街を走行する「ロボット」、街の未来をシミュレートする「ダッシュボード」といったICTサービスを提供することで、進化し続ける街とお客さまを心地よくつなぐことを推進しています。 また、KDDIが自ら体現するスマートシティの成功事例は、ビジネスブランド「WAKONX」として、他エリアでの未来の街づくりにも展開していきます。
――その中で、多々良さんは特に「まちアプリ」を担当されてきたそうですね。ご自身の専門であるサービスデザインの観点から、どのように関わってこられたのですか?
(多々良さん)「まちアプリ」(TAKANAWA GATEWAY CITYアプリ)は、お客さまとの重要なタッチポイントの一つです。私の専門領域がサービスデザインなので、サービス構想段階から提供価値の検討、機能要件の整理などを経て、アプリのローンチまでを担当させていただきました。
街が開業するかなり前から、JR東日本様と弊社のプロジェクトメンバーで、周辺のエリアを何度も散策し、街の特徴を肌で感じられるよう努めました。街の魅力や価値を言語化するワークを実施することで、将来この街に訪れる方々を想像しながら、お客さま目線でのサービスづくりに貢献できたと思っています。

――まさに、街に寄り添う取り組みですね。その「まちアプリ」は、「あなたに気付く街」「みんなで築く街」というコンセプトをどのように具体化しているのでしょうか?
(多々良さん)「あなたに気付く街」については、アプリをダウンロードし、アカウント登録やSuica ID登録をしてくださった全てのユーザー*に向けて、改札やオフィスのフラッパーゲートなどのゲートを通過した際に、あらかじめご登録いただいた好みや、街のタイムリーな情報を元に、その方に合った今必要な情報を教えてくれる情報配信を提供しています。リアルな場所とデジタルの情報を連動させるだけでなく、好みに合わせた内容をお知らせすることで、街が自分に寄り添ってくれているような体験にできるよう検討を進めてきました。
(*好みに合わせた情報の提供は、アプリをダウンロードした上で、事前にアカウント登録で興味関心ごとのご登録とSuica IDのご登録をして頂く必要があります。)
――一方的な情報提供ではなく、双方向のコミュニケーションが生まれるということですね。
(多々良さん)そうですね。そして「みんなで築く街」の体現では、KDDIの本社がこの街に移転することで、約13,000名の社員が日常的にこの街を利用するようになります。そこでアプリを通じてワーカー向けの機能や特典を提供し、より快適に街で過ごせるような工夫を取り入れています。出社して終わりではなく、街の他の施設にも訪れるきっかけを提供することで、街全体が盛り上がるような仕組みをアプリからも提供しています。
――まずは社員の皆さんで実験的に使ってみる、と。
(多々良さん)その通りです。弊社社員が利用できる状態とすることで利用状況を確認し分析するなど、実験要素も多く含まれていますが、その中で良かった取り組みは、今後KDDI以外の入居企業様向けにも提供していくことも検討しています。ワーカーが街の様々な取り組みに参加しやすくなる状態をアプリからも促すことで、平日の賑わいも作りやすくなり、街の事業者にとっても喜ばれるものにしていきたいと考えています。


スマートシティからAIビジネスへ、キャリアの転換
――多々良さんは、スマート事業開発部でこのプロジェクトを推進された後、現在はAIビジネス企画部にご所属でいらっしゃいます。キャリアを転換されたわけですが、これまでのスマートシティ事業部での経験と、現在のAIビジネスの業務はどのように繋がっているのでしょうか?
(多々良さん)スマート事業開発部(現 ビジネスイノベーション推進2部)では、TAKANAWA GATEWAY CITYがまちびらきをする4年ほど前からプロジェクトに参画し、JR東日本様とKDDIの共創プロジェクトである「空間自在プロジェクト」の一員として、様々なICTサービスの構想検討から携わっていました。サービスが具体化する段階では、「まちアプリ」のサービスデザイナー兼PdMとして、アプリの提供価値具体化から機能要件に落とし込む部分を主に担当しました。
街の開業後は、賑わいづくりの一環として、アプリと連携して楽しめるリアルな場とバーチャルを連動させるイベントの検討や実施にも携わりました。直近の組織体制変更でAIビジネス企画部に異動したのですが、スマートシティとは関連の深い領域なんです。これまでまちアプリの中で検討してきたパーソナライゼーションの領域拡大に繋がる取り組みや、業務への生成AI導入に繋げる取り組みなど、新たにAIを活用したビジネスの企画・推進に取り組んでいます。
AIは「街の感覚器官」— 未来のまちづくりにおける役割
――AIはまちづくりにおいて、どのような役割を果たすとお考えですか?単なる便利なツールを超えた、未来の可能性についてお聞かせください。
(多々良さん)私はAIを、まちづくりにおいて単なる便利さを提供する仕組みではなく、街の変化を敏感にとらえ、人々の暮らしをより良くしていく「街の感覚器官」のような存在だと考えています。人の考えや要望は日々変わり続けます。その変化に対応し、一人ひとりに合った豊かさを追求するためには、人々の生活の様子や街全体の動きをきめ細かく理解することが大切です。その理解には、買い物や移動といった行動履歴だけでなく、街に設置されたセンサーやIoT機器から得られる温度・混雑・利用状況などの情報も含まれます。
――それらの膨大な情報をAIが分析していく、と。
(多々良さん)その通りです。AIはこれら膨大な情報を人間の手では処理しきれないスピードで分析し、まだ表に出ていない課題や新しいニーズを浮かび上がらせることができます。例えば、人の流れを予測して混雑を和らげたり、施策やサービスを改善するヒントを生み出したりすることも可能です。
また、KDDIの「データクリーンルーム(DCR)*」を活用することで、他の企業が持つデータと掛け合わせた分析が、個人情報を守りながらできるので、事業者都合ではなく、街の利用者にとって必要な情報に変換してサービスを提供することに活かすことが可能です。
(* KDDIのDCRは、企業が保有する個人情報を外部へ提供することなく、KDDIが保有する情報と掛け合わせたデータ活用をセキュアな環境で可能にする仕組み。DCRを利用することで、プライバシーに配慮しながら各社の情報のみでは難しかった顧客理解を可能とし、新商品開発、需要予測、キャンペーン企画などの幅広いマーケティング活動が実現できます。)
――AIが単純な業務を担うことで、人々の働き方も変わっていくのでしょうか?
(多々良さん)はい、AIが単純な業務を担うことによって、街で働く人はお客さまとの対話や新しい価値を生み出す活動に集中できるようになります。こうして人と街がより自然に調和し、未来に向けて成長していく。その循環を支えるのが、まちづくりにおけるAIの大切な役割だと考えています。
――なるほど。データやAIを活用し、街に住む人や働く人の暮らしを豊かにしていくというお話は、まさにスマートシティにおけるエリアマネジメントそのものですね。多々良さんは、昨年「エリアマネジメントスクール」を受講されたそうですが、どのような学びがありましたか?
(多々良さん)エリアマネジメントの基礎的な情報はもちろん、クオル社がさまざまなエリアで実践して培ってきた事例もご紹介いただき、ここで学んだ内容をどのように実践・活用していけるかをイメージしながら体系的に学べたことが、もっとも印象深かったです。また、多岐にわたる企業のご担当者様と同じカリキュラムを受講させていただき、幅広いアウトプットを拝見できたことも、より深い学びに繋がったと感じています。
――その学びは、TAKANAWA GATEWAY CITYのプロジェクトにどのように活かされましたか?
(多々良さん)まちびらき後に、リアルな場とバーチャルを連動させるイベントを検討する際に、エリマネ講座の第1稿で学んだ「エリマネプランの6W2H」を活用して情報整理をしました。特に「地域の理想像」を言語化するパートが役に立ち、街のコンセプトや弊社のプロダクトで実現したいことなどを踏まえた上で、情報をクリアに整理することができました。その際に、講座で利用したテキストを改めて開いたのですが、テキストが実践でも使いやすい内容になっていることにも気づきまして、とてもありがたかったです。


――実践でも役立つ学びだったのですね。
(多々良さん)はい。人流データを活用した混雑緩和や、イベント情報を届ける仕組みづくりなど、街と人をつなぐサービスを考える上で「地域の声をどう反映するか」が重要であると実感しました。また、多様なプレーヤーと協働しながら進める視点は、まちづくりの持続性を高めるうえで不可欠です。この学びは、キャリアの幅を広げるだけでなく、プロジェクトを一層成長させる力になっています。
昭和「100年」と未来へのメッセージ
――最後に、2025年という「昭和100年」の節目に、TAKANAWA GATEWAY CITYが体現する「未来へのメッセージ」について、多々良さんのお考えをお聞かせください。
(多々良さん)TAKANAWA GATEWAY CITYは、未来のスマートシティの姿を示す場だと考えています。この都市には混雑や防災といった課題がありますが、この街ではAIによる人流予測で混雑状況を加味した情報提供を行ったり、来訪者の関心に応じたイベントや店舗情報を届けたりすることが可能です。
さらに、災害発生時の避難経路を想定したシミュレーションを行うなど、人々の安全を支えています。こうした取り組みを通じ、社会課題の解決と、一人ひとりに寄り添う体験を同時に実現することこそ、この街が未来に向けて発信する大切なメッセージだと捉えています。
――まさに「未来のライフスタイル」を具現化しているのですね。未来のまちづくりを担う人々に向けて、一言メッセージをお願いいたします。
(多々良さん)歴史ある高輪という場所で、テクノロジーと人をつなぎ、未来のライフスタイルを探求し発信する象徴として、多様な人が交わり共に創造できる場があります。私たちKDDI社員は、そこにいち早く携わり、様々な実験を実施するとともに、一人一人が参加者としてこの街を盛り上げていきます。
9月には商業施設NEWoMan TAKANAWAがオープンし、来年には、未来を象徴する文化創造拠点の開業も控えているこの街に、より多くの人々や企業の皆様が訪れて頂き、街の取り組みに参加することで、豊かな暮らしについて考えるきっかけとなります。新しい価値を生み出し続けるまちづくりそのものに関わって頂きたいと思います。ともに、新しいまちづくりにチャレンジしていきましょう。



