近年、AI技術の大幅な進展が注目されるなど、技術革新がますます進行し、第4次産業革命による「Society5.0」が提唱されています。中でも、利便性や効率性の実現を主目的とするのではなく、デジタル技術・データを活用しながら、人間ならではの多様な想像力や創造力を発揮して、社会を“共に創造”していく「創造社会」の概念が提唱されています。
競争から“共創”へと流れ行く社会の中で、まちづくりの分野におけるエリアマネジメントの手法はまさに“共創”を体現するものと言えるのではないでしょうか。そして、エリマネによる“共創”は、単なるまちづくりに留まらず、これからの社会を形作る上で重要な考え方のひとつです。
そこで、「エリマネと“共創”」をテーマとし、エリマネの手順や考え方について体系的に学ぶ「エリマネスクール」の卒業生であり、エリマネ実務に取り組む方々にインタビュー。日々の業務の中でエリマネスクールでの知見がどのように生きているか、今後の社会に求められる“共創”に触れる機会はあるのか――野村不動産株式会社(以下、「野村不動産」)事業創発本部 エリアマネジメント部で、コミュニティスペースの開発に携わるまさにエリマネの“仕掛け人”、横川大悟さんに生の声を伺いました。(以下、敬称略)
「デジタル活用」、マンション販売から出張授業まで
―御社は高級分譲マンション「プラウド-PROUD-」ブランドを中心に展開されていることで有名ですが、改めて事業内容についてお聞かせください。特に近年、AI技術の大幅な進展による技術革新が注目されています。デジタル化を始めとする技術革新の影響は、御社の事業にどのような影響を与えているとお感じでしょうか。
(横川)弊社は総合デベロッパーとして、数多くの事業分野での不動産開発とブランド展開を行っています。住宅事業が強みですが、近年では中野サンプラザを始めとする大規模の複合再開発や、ハードの開発だけでなく、ソフトでのまちづくり推進など、様々な分野に挑戦しています。
技術革新に関しては、対顧客に対しての価値提供が多く進んでいる印象です。例えば、仮想空間を活用した分譲マンションの販売や、物流の自動化(省人化・機械化)に向けた共創プログラムの開発など、デジタルを活用した付加価値の提供が増えているように感じています。
―マンション以外にも幅広い分野に取り組まれているのですね。デジタル化の恩恵が業務効率化に留まることなく、しっかりと顧客に届いていることはまさに理想的だと思います。現在、横川さんはどのような業務に携わっていらっしゃるのでしょうか。技術革新の波を感じることはありますか。
(横川)「Be ACTO」と呼ばれる地域にひらいたコミュニティスペースの開発・推進を行っています。当社分譲マンションの一区画をコミュニティスペースとして開放し、マンション内外の様々な方々が一体となって街を盛り上げていくハブ拠点になることを目指し、開発を行っています。その他、小学校向けの出張授業プログラムの推進も並行して行っており、地域への愛着を育むことを目的として取り組んでいます。
▲横川さんが携わる「Be ACTO武蔵浦和」
業務とは少しそれますが、今の小学生は一人一台タブレット端末が配布されているので、デジタルツールを活用した授業プログラムの開発や遠隔地の学校とのオンライン授業など、弊社の授業プログラムを効率的に普及できるようになったと感じています。
▲出張授業を行う横川さん
―単なる都市開発・まちづくりに留まらず、地域の出張授業にも取り組まれているのですね!まさに企業として地域に入り込んで活躍されている姿が目に浮かびます。
“共創”するための「伴走者」に
―地域との関係づくりにおいて様々な取り組みを実行されている御社では、技術革新の進展に伴い、社会全体として競争から”共創”へ向かう流れの中、エリアマネジメントについてどのような印象をお持ちでしょうか。
(横川)弊社が推進しているエリアマネジメント事業である「Be ACTO」は、「ただ開発した物件を売却して終わりではなく、売却した後も地域の方と共に街を良くしていこう」という考えがあり、スタートしています。
▲「Be ACTO武蔵浦和」の運営に携わる方々
上記取組のように弊社としても“共創”ということは非常に重要だと感じています。様々な立場の人が集まり、意見を出し合いながら街を良いものにしていくことで、住み続けられる街になるほか、共創から生まれるコミュニティの醸成などにもつながると考えます。
その中で弊社はあくまでも「伴走者」としての立ち位置であることは強く意識しています。住宅事業に強みをもつ野村不動産のエリアマネジメントは、地域の居住者が主役と考えており、裏方としてエリアマネジメントに携わっています。
▲「街の推し応援うちわ展」で地域の方とお話する横川さん
―住民の方こそが主役であり、御社は裏方として伴走者に徹しているとのお話、大変印象的でした。横川さんは昨年度開催された「エリマネプランナー基礎講座」を受講いただいておりますが、なぜご受講されたのでしょうか。
(横川)エリアマネジメントの基礎知識を身につけ、現在の業務に活用させるために参加しました。前部署は不動産の売買仲介部門に所属しており、エリアマネジメントに関する知識が全くありませんでした。
現在の部署に異動となったタイミングで本講座を知り、参加しました。エリアマネジメント事業を推進するにあたり必要な知識や、様々な業務を行っている他受講者の方々と意見交換をすることができ、非常に有意義な時間となりました!
―馴染みの少ないエリアマネジメントという領域に触れ、ご異動直後は不安な思いもあったのかもしれません。講座を通して学ぶ上で、事前に懸念されていたことはありましたか。
(横川)基本的にオンラインでの講座開催であったため、他受講者の方とコミュニケーションを取りづらいのでは、と感じていました。しかし実際には積極的に発言や質問をしてくれる方が多いほか、事務局の方もフランクに接してくれたので、楽しく受講することができました。
「全体感の把握」に効果的だった“エリマネスクール”
―実際に講座に参加されて、ご感想はいかがでしたでしょうか。日々取り組まれている業務へ生かすことはできそうでしたでしょうか。
(横川)実際に自身の住む地域を題材とし、与件整理から収支計画まで一気通貫して学ぶことができたことが良かったです。業務では全体のうちの一部しか関われないというケースもあるので、全体感を把握できたのは非常に貴重だったと感じています。
実際の業務では、新規エリマネ施設の開発検討においてエリアの調査分析からコンセプトの設計を担当しました。講座内で学んだ地域資源の調査や分析手法など実務的なところはもちろん、エリマネ導入目的の設定など実例紹介があったおかけで、具体性のあるコンセプト立案に繋げることができたと感じています。
―多様な関係者と“共創”するエリマネにおいては、「全体感の把握」がより重要なポイントと言えそうですね。ご受講を通じて、エリアマネジメントの重要性や将来性を感じられたでしょうか。
(横川)地域特有の課題解決や理想を実現するうえで、エリアマネジメントは不可欠であると感じています。住む人、働く人、まちづくりをする人など、街には様々なステークホルダーがいますが、エリアマネジメント事業があるからこそ、全員の目線をそろえて目標に向かって邁進できると感じています。
今私が携わっている「Be ACTO武蔵浦和」では、地域に住む方や地域団体と連携して9月に大規模イベントを実施予定です。「街をもっと良くしたい!」という気持ちを持った、様々な立場の人たちが集まり意見交換しているのを見ると、その地域でエリアマネジメントを実施した意味があったと感じます。
―この度はお忙しい中、インタビューにご協力いただきましてありがとうございました。最後に、次年度の受講者に向けてメッセージをお願いいたします。
(横川)再開発を始めとしたさまざまな場所で「エリアマネジメント」という言葉が出てきていますが、各地域によって取組内容や組織形態は異なります。エリマネに関する内容を体系的に学べる機会は少なく、すべてが網羅できる本講座は非常に貴重な機会かと思います!エリマネに興味のある他受講者の方と情報交換もできますし、悩んでいるのであれば是非参加してみてください!
―熱いメッセージをありがとうございます!重ねまして、本日はありがとうございました。
エリマネスクール「プランナー基礎講座」(第9期) 受講生募集中!
※現在、クオル(エリマネこ運営会社)では、横川さんが昨年受講されたエリマネスクール「プランナー基礎講座」(第9期)(開講期間:9/28~11/16)の受講生を募集中です。エリマネの初心者は勿論、ある程度実務をされている方のノウハウの整理やブラッシュアップにも幅広く役立つ講座となっており、毎年まちづくりに関わる幅広い業界の方々が受講されています。8/24(土)11時からは、エリアマネジメントにご興味のある皆様が気軽にご参加いただける事前説明会(オンライン形式)も開催予定ですので、是非この機会に受講をご検討下さい。 |
過去のエリマネスクール受講者インタビュー
第7期《第1弾》「あなたと、エリマネ」(エリマネスクール第7期受講生 柳田まどかさん)
第7期《第2弾》「あなたと、エリマネ」(エリマネスクール第7期受講生 山下香澄さん)