エリアマネジメントは、小さな活動や努力の積み重ねである——。よく耳にするお話ですが、根性論に過ぎないと捉えられてしまう事も沢山あります。
大阪の心斎橋エリアには、1982年の設立から44年間、清掃活動や花壇の維持管理といった地道な活動を続けながら、道路空間を利活用した社会実験に挑んできた団体が居ます。それが、「御堂筋長堀21世紀の会」です。 今回は常務理事の阪本さんへのインタビューを通じ、同会がいかに公共空間での地道な活動と、商業地らしい取組みを両立してきたか、また、これから目指すところについて探りました。

| 取材先:NPO法人 御堂筋・長堀21世紀の会 阪本 晃一郎さん |

40年の活動が築くエリアマネジメントの土台
——御堂筋・⻑堀21世紀の会のあらましについて教えて下さい。
当会は現在NPO法人ですが、元々は長堀21世紀計画の会として1982年、大阪の商業中心地である心斎橋エリアで始まりました。企業町会として主に法人を対象に会員を募り、現在は115~120団体が加入しています。 エリマネ団体は地権者さん中心の場合が多いかと思いますが、当会は地元の地権者さんだけでなく幅広く構成員を募っているところも特徴の一つです。勿論地元の店舗さんも沢山入っていただいているのですが、心斎橋エリアや御堂筋・長堀通などを元気にしていく目的に共感いただける方には参画いただける形としています。また会費も年間3万6千円と抑えています。
——活動内容についても伺えますでしょうか。
社会実験やシンポジウムの開催を行っています。また1984年から清掃活動に力を入れています。回数は月2回、時間帯は午前中または昼ごろです。沿道企業の方が特に参加して下さっていて、1回あたり20名ぐらい参加いただいています。
——毎回20名は多いですね!花壇の維持管理も同様でしょうか。
道路の花壇は、道路協力団体として維持管理しています。管理対象は、新橋交差点と、大丸・パルコ前の花壇の3箇所。交差点の花壇は自動潅水装置が無いので、夏はほぼ毎日、当会内の“はなプロジェクト”のメンバーを中心に1日2回の水やりをしています。クリスマスには、長堀♡なでしこ部会が花壇にクリスマスイルミネーションを設置しており、御堂筋の風物詩の一つになっています。


御堂筋沿いの他団体とのつながり
——その他の、他団体との交流や連携についてもお聞きできますでしょうか。
御堂筋沿いの4団体で、2020年に「御堂筋パークストリート推進会議」を立ち上げて、情報交換や協力した活動などをしています。その中で、御堂筋まちづくりネットワークとミナミ御堂筋の会と当会は、御堂筋の道路協力団体としても活動しています。大阪市が御堂筋の側道部分を歩行者空間化とほこみち指定を進めていまして、現在心斎橋あたりまで整備が進んでいます。その取り組みの中で、ほこみち空間の利活用実験や環境美化などの維持管理を、私たち道路協力団体が担っています。
——確かに。心斎橋の交差点を渡ったあたりから歩道幅員が違っていましたね。
万博に合わせて歩行者空間化が進みました。大丸やパルコなど沿道権利者様と一緒に賑わい創出活動などを行っています。また、2023年の御堂筋チャレンジを契機として、社会実験と通じて大阪市と空間の使い方に関する検証も重ねてきました。御堂筋の場合は、キッチンカーやテーブル等を出すと、外国人の方々の利用が多いですね。インバウンドの方が多いのと、道路空間でくつろぐ事に慣れているのかもしれません。
2017年の御堂筋完成80周年を機に、沿道関係者や大阪市と検討を重ね、将来御堂筋をフルモール化する、御堂筋パークストリート構想を策定しました。第一歩として側道の歩行者空間化が進められています。
——テナントとしてのラグジュアリーブランドの方や、ホテルの方々は、道路活用についてどんな印象を持たれているのでしょうか。
直接感想を聞く機会は少ないですが、人の往来や来客は道路活用を通じて増えているとは思います。キッチンカー等の店舗を出す時はゴミの問題に波及しないように清掃をセットにして考えたり、まちのブランドイメージに影響しないよう気を使っていたりします。気軽にキッチンカーやオープンカフェを利用される方は観光客の方が多いので、連動しているところはあるかもしれません。
正直なところ、まだ体感するところまでは出来ていなくて。いまは社会実験や利活用に挑戦するので精一杯なところはあります。

ストリートを舞台にした、商業地らしい「華やかな挑戦」
御堂筋では、社会実験とは別に「光の饗宴」という催しを毎年冬に実施しています。主催は大阪府・市や経済団体等で構成する実行委員会で、当会も協力しています。昨年はPRの一環として真っ赤なロンドンバスを設置しました。
——イルミネーションの中をバスが走っているようでとても素敵ですね! 道路活用ならではのご苦労もあったのではないでしょうか。
かなり面白い仕掛けだったんですが、交通管理者と協議を重ねていくと、交通安全上、歩道上に車を置き続ける事に対してはハードルが高くて。少し残念でしたがタイヤを隠す事で車らしさを無くしました。安全を最優先する必要があるので、思った通りには実施できないですね。でも、面白いものはどんどん置いていきたいです。今年11月に、メリーゴーランドの形をしたベンチを設置しようと計画しています。ぜひ見に来てください。
——ほかにも、華やかなイルミネーションが目を惹きますね。
クリスマスが近づくとラグジュアリーブランドと協力してイルミネーションを実施しています。道路上なので大きさや重さ、車からの見え方の確認がある他、ブランド名が入ってしまうと屋外広告物になってしまうので、あくまでもイベント上のモニュメントとして設置するようにしています。
私たちも、ラグジュアリーブランドにもっと御堂筋の道路を活用してもらえれば、上質なにぎわいが実現できると期待しています。
——諸官庁協議とブランドの希望との間で板挟みになる事もあるのではないでしょうか。
毎回毎回難しい事だらけで、いまはやりたい事の3分の1ぐらいしかできていないと感じています。でもちょっとずつの実績を積み上げて、やっと1つ実施している感じです。来年はさらにもう一歩前進できるのかな、と思っております。


試行錯誤の舞台裏——一筋縄ではいかない活動のリアル
当会は、会員数は多いのですが、中心となって利活用などに汗をかいて下さる方は多くありません。世代交代はひとつの課題ですね。行政協議だけでなく備品の出し入れや警備等の手配もなかなか大変ですし。東京にあるような常設の店舗等が道路上に作れたら良いのですが、まだそこまでは辿り着けていないです。 今後は持続可能性も考慮して、外部にある程度委託できるようにしていきたい、という話も出ていて、そのための資金確保も含めて検討を進めています。
——会費以外の収益源としてはどのようなものがありますか。
2つあります。1つは御堂筋沿道で行っているバナー広告で、各エリアに数本立っていますので、その広告料があります。もう一つは、まだ少ないですが市がデジタルサイネージを数か所社会実験として設置しているので、利活用を通じて若干の収益があります。いずれも道路の維持管理に活用しています。
御堂筋の「パークストリート」化にむけて
——御堂筋・長堀21世紀の会の今後目指すところについて伺えますでしょうか。
会の中でも議論しているのですが、私たちの目指すところはやっぱり御堂筋が大阪のシンボルロードとして愛され続け、心斎橋が商業地大阪における上質な賑わいの中心地であり続ける事。そのための取り組みとして、パークストリート化、市民のための公園のような空間となる事を目標としています。まだまだ実現には時間がかかるのかなと思っていますが、私たちとしては真剣にこの風景を目指しています。
——阪本さんとしては、この街をどんな場所にしていきたいでしょうか。
当会は、“おしゃれな大人の散歩まち”というブランドを掲げています。今後、それがどういう空間でどういう街なのか、という話が日々刻々と変わっていったとしても、“おしゃれな大人の散歩まち”と言われるようなエリアにし続けたいと思っています。
大阪はごちゃごちゃしているイメージが付きがちですが、上質な空間も大阪で息づいている事を皆さんに知っていただきたい。これは会の中の皆とも、ずっと話し続けています。

——上質で華やかな道路空間を展開する裏には、長きにわたる地道な活動と、一歩一歩積み重ねた試行錯誤がありました。
この先、大人の散歩まちがどのような風景を折り重ねていくのか、目が離せません。
ぜひ皆さんも、現地を訪れてみてください。
活動の詳細はこちら↓
・NPO法人 御堂筋・長堀21世紀の会 HP https://mn21.jp/
執筆: 脇本 菜津美
編集: エリマネこ編集部



